甲から乙に対する第一請求と乙・丙に対する固有必要的共同訴訟たる第二請求とにつき原審で一個の判決があり、乙から第一請求に関する敗訴部分を目的として上告の申立があつた場合に、甲が第二請求の敗訴部分を目的として附帯上告を申し立てることは、許されない。
上告審に移審していない部分を目的とする不適法な附帯上告とされた事例
民訴法396条,民訴法372条
判旨
裁判官の更迭があった場合に、弁論の更新手続を経ずに言い渡された判決は、判決に関与できない裁判官によってなされたものとして違法である。また、婚姻取消訴訟のような固有必要的共同訴訟において、共同被告の一人のみに対する上告の効力は、他の共同被告に関する部分には及ばない。
問題の所在(論点)
1. 裁判官の更迭後、弁論の更新手続を経ずに言い渡された判決の適法性。 2. 固有必要的共同訴訟において、共同被告の一人のみを相手方として提起された上告(または附帯上告)の効力の及ぶ範囲。
規範
1. 裁判官が更迭された場合、従前の口頭弁論の結果を更迭後の裁判官に把握させるため、弁論の更新手続(民事訴訟法249条2項、旧187条2項)を経なければならない。これに反してなされた判決は、判決の基礎となる口頭弁論に関与しない裁判官による判決(民事訴訟法312条2項1号、旧395条1項1号)として絶対的上告理由となる。 2. 固有必要的共同訴訟において、一部の被告のみを相手方とする上告の効力は、上告人が他の共同被告と共同してのみ当事者となり得る部分には及ばない。
重要事実
原審の第3回口頭弁論期日において実質的弁論がなされ弁論が終結したが、その後の再開期日において裁判所の構成が変更(裁判官1名の更迭)された。しかし、変更後の期日に当事者双方が欠席したため、弁論の更新手続が行われないまま再度弁論が終結され、判決が言い渡された。また、被上告人は婚姻取消請求に関し、上告人のみを相手方として附帯上告を申し立てたが、当該訴訟は夫婦双方を被告とする固有必要的共同訴訟であった。
事件番号: 昭和39(オ)924 / 裁判年月日: 昭和42年5月23日 / 結論: 破棄差戻
当該口頭弁論期日の開かれた事跡が記録上見当らないことが上告理由で指摘された等判示事実関係のもとにおいては、その後、右期日の開かれた旨を記載する口頭弁論調書を作成することは許されない。
あてはめ
1. 本件では第3回期日後に裁判官の構成が変更されているが、第5回期日において弁論の更新手続がなされていない。したがって、判決に関与した裁判官は直接口頭弁論を聴取しておらず、民訴法上の更新手続違反があるため、判決の基本たる口頭弁論に関与しない裁判官による判決に該当する。 2. 婚姻取消請求は婚姻の当事者双方を相手方とすべき固有必要的共同訴訟である。本件上告は共同被告のうち一人(上告人)のみを相手方としており、他方の当事者(D)に関する部分は上告の効力による移審の範囲に含まれない。ゆえに、その部分を目的とする附帯上告は不適法である。
結論
1. 原判決中、更迭後の裁判官によって更新手続なくなされた部分は破棄され、原審に差し戻される。 2. 固有必要的共同訴訟のうち、上告の効力が及んでいない部分を目的とする附帯上告は却下される。
実務上の射程
裁判官の更迭に伴う弁論の更新の重要性を示す基本的判例。答案上では、直接主義の要請から導かれる手続的瑕疵を論じる際に参照する。また、固有必要的共同訴訟における合一確定の要請と、移審の範囲(上告の客観的・主観的範囲)を整理する際の素材としても有用である。
事件番号: 昭和26(オ)567 / 裁判年月日: 昭和27年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が交代した後に弁論の更新手続が適法に行われ、その後の口頭弁論期日で弁論が終結された場合、その後に設けられた判決言渡期日が延期されたとしても、判決の基礎となる弁論自体に違法はない。 第1 事案の概要:第一審あるいは控訴審(原審)において、昭和25年11月28日の口頭弁論期日の後、裁判官の構成に…