一、遺贈の承認および放棄に関する規定は死因贈与に準用されない。 二、甲の所有していた不動産について、その相続人でない乙に相続を原因とする所有権移転登記がされ、乙から丙に贈与を原因とする所有権移転登記がされているが、実体上は甲から丙に右不動産が死因贈与され、現在丙がその所有者である場合には、甲の相続人が乙および丙に対し右各登記の抹消を請求することはできない。
一、遺贈の承認放棄に関する規定の死因贈与への準用の有無 二、権利移転の過程において実体と異なるが現在の実体的権利関係に合致しているため登記の抹消請求が許されないとされた事例
民法986条,民法554条,民法177条
判旨
死因贈与には、遺贈の承認および放棄に関する民法の規定は準用されない。
問題の所在(論点)
民法554条により、死因贈与に対して遺贈の承認・放棄に関する規定が準用されるか。
規範
遺贈の承認・放棄(民法986条等)に関する規定は、遺言が遺言者の単独行為であることを前提とする制度である。したがって、契約の一種である死因贈与については、民法554条による準用の対象外であると解するのが相当である。
重要事実
亡Dが本件土地の一部を上告人に対して死因贈与したと主張される事案において、その贈与の効力に関連し、遺贈の承認・放棄に関する規定が死因贈与に準用されるか否かが争点となった。
事件番号: 昭和27(オ)653 / 裁判年月日: 昭和30年9月9日 / 結論: 棄却
一 農地の贈与についての知事の許可は、贈与の成立前になされることを要せず、許可のあつたときから右贈与は効力を生ずるものであり、許可当時贈与者が既に死亡していても、その効力の発生を妨げない。 二 受贈者に対する土地所有権移転登記が、死亡している贈与者名義でなされた場合であつても、右登記が死亡者およびその相続人の意志に反し…
あてはめ
遺贈の承認・放棄の規定は、単独行為である遺言による一方的な利益付与に対し、受遺者にその受領を強制しないために設けられた規定である。これに対し、死因贈与は贈与者と受贈者の合意に基づく「契約」である。契約である以上、当事者間の意思の合致が既に存在しており、単独行為を前提とした承認・放棄の仕組みをあてはめる必要性も根拠もない。
結論
死因贈与には遺贈の承認・放棄に関する規定は準用されない。
実務上の射程
死因贈与への遺贈規定の準用(554条)の限界を示す重要判例である。遺贈独自の制度(単独行為性を前提とする能力、方式、承認・放棄など)については準用が否定される傾向にあり、本判決はその代表例として答案で活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)246 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 棄却
係争家屋の所有権を贈与により取得したとして贈与者の相続人らに対し贈与を原因とする所有権移転登記を求めたのに対し、裁判所が、右贈与の主張は死因贈与の主張を包含するものと解して、死因贈与による所有権移転を認定しても、当事者の主張しない事実を認定したものとはいえない。
事件番号: 昭和30(オ)392 / 裁判年月日: 昭和32年5月21日 / 結論: 棄却
死因贈与の方式については、遺贈に関する規定の準用はない。
事件番号: 昭和43(オ)446 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
予告登記の存することの一事から、これに後行して係争不動産につき物権の得喪変更に関する法律行為を為した第三者が、当該登記原因の瑕疵につき悪意と推定されるべき筋合はない。
事件番号: 昭和57(オ)942 / 裁判年月日: 昭和60年11月29日 / 結論: 棄却
甲から不動産を取得した乙がこれを丙に贈与した場合において、乙が、司法書士に依頼して、登記簿上の所有名義人である甲に対し、右不動産を丙に譲渡したので甲から直接丙に所有権移転登記をするよう求める旨の内容証明郵便を差し出したなど判示の事情があるときは、右内容証明郵便は、民法五五〇条にいう書面に当たる。