死因贈与の方式については、遺贈に関する規定の準用はない。
死因贈与の方式と遺贈に関する規定準用の有無
民法554条
判旨
死因贈与契約の成立には、民法554条による遺贈の規定の準用があっても、遺言の方式に関する規定は適用されない。
問題の所在(論点)
民法554条が「贈与者の死亡によって効力を生ずべき贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」と規定していることに関連し、死因贈与の成立に遺言の方式(自筆証書や公正証書等)が必要かどうかが問題となる。
規範
民法554条は、死因贈与の「効力」については遺贈に関する規定に従う旨を定めているが、これは契約としての実質的効力(遺贈の失効や減殺等)を指すものであり、その「方式」については遺言の厳格な方式(民法960条以下)を準用する趣旨ではない。したがって、死因贈与は当事者の合意のみによって成立する不要式契約である。
重要事実
上告人は、死因贈与も遺言と同様に民法が定める遺言の方式に従って行われるべきであると主張し、方式を欠く死因贈与の有効性を争って上告した。なお、具体的な贈与の内容や当事者関係、原因事由等の詳細は本判決文からは不明である。
事件番号: 昭和42(オ)560 / 裁判年月日: 昭和43年6月6日 / 結論: 棄却
一、遺贈の承認および放棄に関する規定は死因贈与に準用されない。 二、甲の所有していた不動産について、その相続人でない乙に相続を原因とする所有権移転登記がされ、乙から丙に贈与を原因とする所有権移転登記がされているが、実体上は甲から丙に右不動産が死因贈与され、現在丙がその所有者である場合には、甲の相続人が乙および丙に対し右…
あてはめ
死因贈与は贈与者と受贈者の意思表示の合致により成立する「契約」であるのに対し、遺贈は遺言者の単独の意思表示による「単独行為」である。民法554条の準用は、死亡を契機に財産が移転するという類似性に着目して効力面での規律を図るものであって、契約である死因贈与に、単独行為である遺言の厳格な方式を要求することは、契約の自由および不要式の原則に照らしてその性質に反するといえる。
結論
死因贈与の方式について遺言の規定は適用されない。したがって、特段の方式を具備していなくとも、合意があれば死因贈与契約は有効に成立する。
実務上の射程
本判決は、死因贈与が不要式契約であることを確定させたリーディングケースである。答案上は、書面によらない死因贈与の撤回可能性(550条適用の是非)や、遺贈の撤回に関する964条・1022条の準用(554条の「性質に反しない限り」の具体的検討)を論ずる際の前提として、方式の自由を指摘するために用いる。
事件番号: 昭和42(オ)246 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 棄却
係争家屋の所有権を贈与により取得したとして贈与者の相続人らに対し贈与を原因とする所有権移転登記を求めたのに対し、裁判所が、右贈与の主張は死因贈与の主張を包含するものと解して、死因贈与による所有権移転を認定しても、当事者の主張しない事実を認定したものとはいえない。
事件番号: 昭和36(オ)601 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
書面によらない負担付贈与契約に基づき当事者の一方が債務を履行したときは、書面によらない贈与であることを理由にこれを取消すことはできない。
事件番号: 昭和35(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和36年12月12日 / 結論: 棄却
書面によらない贈与による権利の移転を認める判決が確定した後は、既判力の効果として民法第五五〇条による取消権を行使して右贈与による権利の存否を争うことは許されない。
事件番号: 昭和57(オ)942 / 裁判年月日: 昭和60年11月29日 / 結論: 棄却
甲から不動産を取得した乙がこれを丙に贈与した場合において、乙が、司法書士に依頼して、登記簿上の所有名義人である甲に対し、右不動産を丙に譲渡したので甲から直接丙に所有権移転登記をするよう求める旨の内容証明郵便を差し出したなど判示の事情があるときは、右内容証明郵便は、民法五五〇条にいう書面に当たる。