書面によらない贈与による権利の移転を認める判決が確定した後は、既判力の効果として民法第五五〇条による取消権を行使して右贈与による権利の存否を争うことは許されない。
書面によらない贈与を認める判決が確定した後の民法第五五〇条による右贈与の取消の可否。
民法550条,民訴法199条,民訴法545条2項
判旨
書面によらない贈与(死因贈与を含む)を認める判決が確定した後は、民法550条の取消権を行使して贈与の効力を争うことは、既判力の効果として許されない。
問題の所在(論点)
書面によらない贈与の取消権(民法550条)が、その贈与の成立・有効を認めた確定判決の既判力によって遮断されるか。特に、判決確定後の取消権行使の可否が問題となる。
規範
書面によらない贈与(民法550条、554条)について、その贈与による権利移転を認める判決が確定した場合には、訴訟法上の既判力の効果として、最早当該取消権を行使して権利の存否を争うことは許されなくなる。この場合、履行が終了しているか否か等の実体法上の他の要件を検討するまでもなく、判決確定の一事をもって取消権の行使は遮断される。
重要事実
上告人の被相続人Dが、被上告人Bに対し、書面によらず本件物件を死因贈与した。BがDの相続人である上告人を相手取って提起した別件訴訟において、当該死因贈与を認める判決が言い渡され、既に確定していた。しかし、上告人は当該判決の確定後、改めて当該死因贈与が書面によらないものであることを理由として、民法550条に基づく取消しの意思表示を行い、贈与の無効を主張して争った。
事件番号: 昭和31(オ)943 / 裁判年月日: 昭和35年8月26日 / 結論: 棄却
一 後見人の職務執行停止の仮処分命令において、後見人に対する職務執行停止の効力はその命令正本が当該後見人に送達されたときに生ずる。 二 甲所有の不動産を、その後見人乙が代理して丙に譲渡し、乙の職務執行停止の仮処分がなされた後乙は丙のために移転登記をなし、ついで丙は同不動産を丁に譲渡し移転登記をした場合に、甲は丁に対して…
あてはめ
本件において、上告人と被上告人Bとの間の前訴(不動産所有権保存登記抹消登記等請求控訴事件)において、亡DからBへの死因贈与の事実が認められ、判決が確定している。上告人が主張する取消権は、前訴の口頭弁論終結前に既に行使可能であった形成権であり、贈与の権利移転という前訴判決の内容と矛盾する主張である。したがって、判決確定後にこの取消権を行使することは、前訴判決の既判力により制限される。履行の終了といった取消権消滅の個別事情の有無にかかわらず、既判力の効果により取消しの効力は生じないものと解される。
結論
上告人による取消しはその効力を生じない。贈与の事実を認めた確定判決がある以上、もはや取消権を行使してその効力を争うことはできない。
実務上の射程
民事訴訟法における既判力の遮断効(標準時前の形成権行使の制限)を、民法550条の取消権に適用した事例。答案上は、既判力の範囲(後訴での主張制限)を論じる際、実体法上の取消権が判決確定によって事実上消滅する(行使できなくなる)典型例として引用できる。
事件番号: 昭和36(オ)601 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
書面によらない負担付贈与契約に基づき当事者の一方が債務を履行したときは、書面によらない贈与であることを理由にこれを取消すことはできない。
事件番号: 昭和26(オ)113 / 裁判年月日: 昭和27年5月2日 / 結論: 破棄差戻
調停により取得した不動産の二分の一の共有持分権に基く分割請求権があることを原因として提起した共有物分割請求訴訟において、その請求を棄却した確定判決の既判力は、判決の理由において、共有権の存否につき判断をしている場合であつても、右の調停により共有持分権を取得したかどうかの点までは及ばない。
事件番号: 昭和27(オ)653 / 裁判年月日: 昭和30年9月9日 / 結論: 棄却
一 農地の贈与についての知事の許可は、贈与の成立前になされることを要せず、許可のあつたときから右贈与は効力を生ずるものであり、許可当時贈与者が既に死亡していても、その効力の発生を妨げない。 二 受贈者に対する土地所有権移転登記が、死亡している贈与者名義でなされた場合であつても、右登記が死亡者およびその相続人の意志に反し…
事件番号: 昭和27(オ)480 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の贈与において、書面によらない場合であっても、当該不動産の所有権移転登記が完了したときは、民法550条にいう「履行の終わった」ものと解され、もはや贈与の解除をすることはできない。 第1 事案の概要:本件は、書面によらずになされた不動産の贈与について、贈与者が民法550条に基づき贈与の撤回(取…