土地の借主が、約三年の間に礼金または賃料として三回にわたつて一万円ないし一万五〇〇〇円を支払い、貸主が特段の異議を留めることなく受領していた場合であつても、右金額が適正賃料額に比してかなり低額であり、かつ、その金額は借主において一方的に定めたものであつて、貸主との協議に基づくものでないうえに、必ずしも定期的に支払われたものでない等、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、借主の土地使用関係は、賃貸借ではなく使用貸借と認めるのが相当である。
土地使用関係が賃貸借ではなく使用貸借であると認められた事例
民法593条,民法601条
判旨
土地の利用関係が賃貸借(民法601条)に該当するか、それとも使用貸借(民法593条)に該当するかは、当事者間の合意内容や対価支払の有無等の事実関係に基づいて判断される。
問題の所在(論点)
本件における土地の使用関係について、対価性の有無等の事実関係に照らし、民法601条の賃貸借に該当するか、あるいは民法593条の使用貸借に該当するかが問題となった。
規範
契約の性質が賃貸借か使用貸借かは、目的物の使用及び収益の対価として賃料を支払う合意(賃貸借)があるか、それとも無償で借用する合意(使用貸借)であるかという、客観的な合意の内容によって区別される。
重要事実
上告人と被上告人(またはその前主)との間で行われた土地の使用関係について、賃貸借契約の成立が主張されたが、原審は事実関係を認定した上で、当該土地使用は無償の使用貸借であると判断した。上告人はこれを不服として、賃貸借である旨を主張して上告した。
事件番号: 昭和38(オ)802 / 裁判年月日: 昭和40年2月16日 / 結論: 棄却
土地を買い受ける当時、同土地に他人が貸借権を有することを買主が知つていたという事実だけでは、当該買主がその他人の賃借権を否定することをもつて、直ちに権利の濫用であり、信義則に反するとは断定しえない。
あてはめ
原審が適法に認定した事実関係(具体的な対価の授受や合意の詳細は判決文からは不明)に照らせば、当該土地の使用は対価性を欠くものと評価される。したがって、これを賃貸借ではなく使用貸借であると判断した原審の認定は妥当であり、特段の違法は認められない。
結論
本件土地使用は使用貸借であるとした原審の判断を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
契約の法的性質の決定は事実認定の問題であり、対価支払の実態が重要であることを示す。答案上では、権利の有無を論じる前提として、固定資産税程度の負担に留まる場合は使用貸借と評価するなど、対価性の評価に際して事実を拾い上げる際の指針となる。
事件番号: 昭和44(オ)500 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: 棄却
一、控訴審判決の主文において物件を表示するにつき第一審判決に掲げる物件の表示を引用することは許される。 二、賃借権存在確認の訴において、原告が確定を求めていない賃料額、存続期間または契約の成立年月日を主文に掲記することは必要でない。
事件番号: 昭和32(オ)50 / 裁判年月日: 昭和33年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法が適用されない「一時使用のための借地権」に該当するか否かは、賃貸借の目的、期間、設備、その他の諸客観的状況を総合的に考慮して判断される。本件では、原審の認定に基づき、本件宅地の賃貸借が一時使用のためのものであると認められた。 第1 事案の概要:上告人は本件宅地を賃借していたが、被上告人が…
事件番号: 昭和33(オ)462 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料値上げの合意が地代家賃統制令に違反して無効である場合、当該合意に基づく不足分の不払を理由とする賃貸借契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)との間で、本件建物の賃料値上げの合意がなされた。賃貸人は、賃借人が昭和25年9月分の賃料につき、値上げ後の不足分…
事件番号: 昭和31(オ)190 / 裁判年月日: 昭和32年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の譲受人が、当該不動産に対する賃借権の存在を知って買い受けた場合であっても、当該賃借権が対抗要件を欠いている以上、新所有者が土地の明渡しを求めることは原則として権利の濫用にあたらない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を有していた。被上告人は、上告人が本件土地を占有し賃借権…