一、控訴審判決の主文において物件を表示するにつき第一審判決に掲げる物件の表示を引用することは許される。 二、賃借権存在確認の訴において、原告が確定を求めていない賃料額、存続期間または契約の成立年月日を主文に掲記することは必要でない。
一、控訴審判決の主文において物件を表示するにつき第一審判決に掲げる物件の表示を引用することの可否 二、賃借権存在確認の訴において、賃料額、存続期間または契約の成立年月日を主文に掲記することの要否
民訴法391条,民訴法186条,民法601条
判旨
賃借権存在確認の訴えにおいて、賃貸借の目的物が特定されている限り、賃料・存続期間・成立年月日を主文に掲記する必要はない。また、賃料支払の事実は賃貸借の成立を判断するための間接事実にすぎず、裁判所が当事者の主張によらずにこれを判断しても弁論主義に反しない。
問題の所在(論点)
1. 賃借権存在確認判決の主文において、賃料・期間等の契約条件を明示する必要があるか。2. 賃料支払の事実は主要事実か間接事実か(弁論主義の適用範囲)。
規範
賃借権存在確認の訴えの目的は、権利(賃借権)そのものの現存の確認に尽きるため、目的たる土地が特定されている限り、賃料額や存続期間等の契約条件を主文で特定する必要はない。また、賃料支払等の事実は、賃貸借契約という法律効果を基礎付ける主要事実ではなく、その存否を推認させるための間接事実にすぎないため、弁論主義の適用を受けず、裁判所は当事者の主張に拘束されず証拠に基づき認定できる。
重要事実
被上告人と上告人の先代Dとの間で、昭和20年頃、期間の定めのない土地賃貸借契約が成立した。当初は約199坪であったが、後に約260坪に拡大し、さらに換地予定地の指定に伴い、昭和25年頃には使用収益の範囲を特定の地域とする旨の合意が成立した。被上告人は、上告人らに対し、当該土地に対する賃借権の存在確認を求めて提訴した。これに対し上告人側は、賃料額等の契約内容が主文に掲記されていないことや、裁判所が主張のない賃料支払の事実を認定したことの違法を主張した。
あてはめ
1. 被上告人の請求は「賃借権そのものが現に存在することの確認」を求めるものであり、第一審判決を引用する形で目的土地が特定されている以上、契約の詳細(賃料、期間、成立日)は権利の特定に不可欠な要素ではなく、主文に掲記せずとも特定を欠くとはいえない。2. 賃料支払の事実は、本件契約が「賃貸借契約(有償)」であることを推認させるための材料にすぎず、民法601条の要件たる「賃料を支払うことの合意(主要事実)」そのものではない。したがって、間接事実として当事者の主張を待たずに証拠から認定することが可能である。
結論
本件賃借権の存在確認請求は認められる。主文に賃料等の契約条件を掲記する必要はなく、また、賃料支払の事実を主張に基づかず判断した点に違法はない。
実務上の射程
1. 確認の訴えにおける「対象の特定」の程度を示す。権利の同一性を識別できれば足り、契約細部まで主文に含める必要はない。2. 弁論主義における主要事実と間接事実の区別(特に賃貸借における賃料支払事実の性質)の好例として、答案上のあてはめで利用可能である。
事件番号: 昭和42(オ)498 / 裁判年月日: 昭和42年9月7日 / 結論: 棄却
土地の借主が、約三年の間に礼金または賃料として三回にわたつて一万円ないし一万五〇〇〇円を支払い、貸主が特段の異議を留めることなく受領していた場合であつても、右金額が適正賃料額に比してかなり低額であり、かつ、その金額は借主において一方的に定めたものであつて、貸主との協議に基づくものでないうえに、必ずしも定期的に支払われた…
事件番号: 昭和32(オ)50 / 裁判年月日: 昭和33年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法が適用されない「一時使用のための借地権」に該当するか否かは、賃貸借の目的、期間、設備、その他の諸客観的状況を総合的に考慮して判断される。本件では、原審の認定に基づき、本件宅地の賃貸借が一時使用のためのものであると認められた。 第1 事案の概要:上告人は本件宅地を賃借していたが、被上告人が…
事件番号: 昭和44(オ)342 / 裁判年月日: 昭和45年3月24日 / 結論: 棄却
普通建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において期間を一〇年と定めた場合には、右存続期間の約定は借地法一一条により、その定めがなかつたものとみなされ、右賃貸借の存続期間は、同法二条一項本文により契約の時から三〇年と解すべきである。 (反対意見がある。)