賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に転貸した土地が賃借土地の約一二分の一の部分にすぎない場合にも、特段の事情のないかぎり、賃貸人は右転貸を理由として賃貸借契約全部を解除することができる。
借地の一部の無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除
民法612条
判旨
賃借人が賃借地の一部を無断で転貸した場合、その面積が全体の一部(約12分の1)にすぎなくても、特段の事情がない限り、賃貸人は賃貸借契約の全部を解除できる。
問題の所在(論点)
賃借物の一部についての無断転貸がなされた場合において、民法612条2項に基づき、賃貸借契約の「全部」を解除することが認められるか。また、転貸部分が面積比で僅少であることは「信頼関係を破壊しない特段の事情」にあたるか。
規範
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物の一部を転貸した場合(民法612条1項)、特段の事情のない限り、無断転貸によって賃貸人と賃借人との間の信頼関係が損なわれないわけではなく、賃貸人はこれを理由として賃貸借契約の全部を解除することができる(同条2項)。
重要事実
賃借人Aは、賃貸人Bから土地155.07平方メートルを賃借していたが、そのうち12.39平方メートル(全体の約12分の1)を、Bの承諾を得ることなく訴外Dに転貸した。Bは、Aの無断転貸を理由として賃貸借契約の解除を主張した。これに対し、Aは転貸部分が僅少であることを理由に解除の有効性を争った。
事件番号: 昭和42(オ)146 / 裁判年月日: 昭和43年2月1日 / 結論: 棄却
「推認」の語は、証拠によつて認定された間接事実を総合し、経験則を適用して主要事実を認定する場合に用いられる用語法であつて、証明度において劣る趣旨を示すものではない。
あてはめ
本件において転貸された土地は、賃借土地全体の約12分の1にすぎない。しかし、一部の無断転貸であっても、賃貸借契約における信頼関係は契約全体に及ぶものである。記録上、面積の僅少さ以外に、本件転貸が被上告人(賃貸人)に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情が存在することを主張・立証しているとは認められない。したがって、面積の多寡にかかわらず、無断転貸という事実をもって信頼関係は破壊されたものと評価され、全部解除が認められる。
結論
一部の無断転貸であっても、特段の事情がない限り賃貸借契約全部の解除を妨げられない。本件解除は有効である。
実務上の射程
一部の無断譲渡・転貸であっても、解除の効力が契約全体に及ぶことを示した。答案上は、信頼関係破壊の理論(最高裁昭和28年9月25日判決等)を前提としつつ、一部の違反が「特段の事情」にあたるか否かの判断において、面積の割合だけでなく、利用態様や転貸に至る経緯等の個別事情を総合的に論ずる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和36(オ)1346 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 棄却
賃借土地の三分の一にすぎない土地を無断転貸しても、特別の事由のないかぎり、賃借地全部について契約解除ができる。
事件番号: 昭和41(オ)1073 / 裁判年月日: 昭和42年8月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物の転貸をした場合であっても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は民法612条2項に基づく解除権を行使できない。 第1 事案の概要:賃借人Bは、賃貸人である上告人Aの承諾を得ることなく、本件土地の一部を訴外Dに転貸した。この転…
事件番号: 昭和39(オ)306 / 裁判年月日: 昭和40年6月4日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約の当事者間において、賃借地上の建物が第三者の所有に帰したときは賃借権は当然に消滅する旨の特約がなされた場合であつても、賃借人が第三者に譲渡した建物の敷地部分が借地全体からみて少部分であり、しかも、元来その余の部分とは別々の時期に別々に賃借され、従来から明確に区分されて使用されている等原判示の事情(原判決理…
事件番号: 昭和42(オ)657 / 裁判年月日: 昭和46年6月22日 / 結論: 棄却
宅地の賃借人が借地の一部について借地権を第三者に譲渡した場合において、右譲渡部分が約四二〇平方メートルの借地のうち最も価値の低い部分にあたる約七〇平方メートルにすぎず、賃借人が従来の事情から右譲渡につき賃貸人の承諾が得られるものと思い、その際の名義書替料として相当の金員を賃貸人に支払うことを予定していた等、判示のような…