「推認」の語は、証拠によつて認定された間接事実を総合し、経験則を適用して主要事実を認定する場合に用いられる用語法であつて、証明度において劣る趣旨を示すものではない。
事実認定に用いられる「推認」の語の意義
民訴法185条
判旨
賃借人が賃借地の一部を賃貸人の承諾なく転貸した場合には、特段の事情がない限り、賃貸人は賃貸借契約の全部を解除することができる。
問題の所在(論点)
賃借人が賃借地の一部を無断転貸した場合において、賃貸人は賃貸借契約の全部を解除することができるか。また、背信行為と認めるに足りない特段の事情の存否が争点となった。
規範
民法612条2項に基づく解除に関し、賃借人が賃借物の一部を無断転貸した場合であっても、特段の事情が認められない限り、賃貸人は契約の全部を解除し得ると解すべきである。また、信頼関係破壊の法理の観点から、当該転貸行為が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権の行使は制限される。
重要事実
賃借人A1は、賃貸人Bから宅地約330.57平方メートルを借受けていたが、そのうち約78.18平方メートルをA2に、約94.81平方メートルを訴外Dに、Bの承諾を得ることなく転貸した。本件土地の賃貸借契約には転貸禁止条項が存在しており、転貸の際に礼金等の授受も行われていなかった。Bは、A1によるこれら一部無断転貸を理由として、賃貸借契約全部の解除を主張した。
事件番号: 昭和42(オ)440 / 裁判年月日: 昭和42年10月6日 / 結論: 棄却
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に転貸した土地が賃借土地の約一二分の一の部分にすぎない場合にも、特段の事情のないかぎり、賃貸人は右転貸を理由として賃貸借契約全部を解除することができる。
あてはめ
まず、A1は借地面積の約半分に相当する部分を複数の第三者に無断で転貸しており、これは民法612条1項に違反する。一部の転貸であっても、賃貸借契約は不可分な信頼関係に基づくものである以上、特段の事情がない限り全部解除が認められる。本件では、転貸禁止条項があるにもかかわらず承諾を得ておらず、承諾の推認を支える礼金の授受等も認められない。したがって、本件の無断転貸はBに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとはいえず、解除の効力は契約全体に及ぶ。
結論
無断転貸を理由とする賃貸借契約全部の解除は有効である。上告棄却。
実務上の射程
一部の無断転貸であっても全部解除が可能であることを明示した判例である。答案上は、まず民法612条2項により全部解除が可能であるという原則論(大判昭10.4.22引用)を述べた上で、信頼関係破壊の法理(最判昭28.9.25等)に基づき「背信行為と認めるに足りない特段の事情」の有無を検討する流れで用いる。
事件番号: 昭和39(オ)306 / 裁判年月日: 昭和40年6月4日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約の当事者間において、賃借地上の建物が第三者の所有に帰したときは賃借権は当然に消滅する旨の特約がなされた場合であつても、賃借人が第三者に譲渡した建物の敷地部分が借地全体からみて少部分であり、しかも、元来その余の部分とは別々の時期に別々に賃借され、従来から明確に区分されて使用されている等原判示の事情(原判決理…
事件番号: 昭和34(オ)166 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人に無断で賃借権を譲渡し又は転貸した場合、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、賃貸人は民法612条に基づき契約を解除できる。 第1 事案の概要:賃借人Dは、賃貸人である被上告人に無断で本件土地の賃借権を譲渡し、またはこれを転貸した。また、Dは賃貸借契約成…
事件番号: 昭和34(オ)386 / 裁判年月日: 昭和36年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借地の一部の無断転貸であっても、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、賃貸借契約全部を解除し得る。また、建物買取請求権は転貸人には認められない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)から借り受けていた賃借地の一部を、被上告人の承諾を得ることなく第三者に無断で転貸し…
事件番号: 昭和36(オ)1346 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 棄却
賃借土地の三分の一にすぎない土地を無断転貸しても、特別の事由のないかぎり、賃借地全部について契約解除ができる。