判旨
賃借地の一部の無断転貸であっても、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、賃貸借契約全部を解除し得る。また、建物買取請求権は転貸人には認められない。
問題の所在(論点)
1. 賃借地の一部についての無断転貸を理由に、賃貸借契約全部を解除することができるか。 2. 無断転貸があった場合、直ちに解除が認められるか(背信性の有無)。 3. 転貸人に建物買取請求権が認められるか。
規範
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物の使用・収益をさせた場合、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる(民法612条2項)。ただし、賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権は発生しない(背信理論)。また、建物買取請求権(旧借地法10条、現借地借家法13条)の行使主体は、地上物件と共に賃借権を譲り受け、または転借した者に限られ、転貸人は含まれない。
重要事実
上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)から借り受けていた賃借地の一部を、被上告人の承諾を得ることなく第三者に無断で転貸した。被上告人はこの無断転貸を理由に、本件賃貸借契約全体の解除を主張した。これに対し上告人は、一部の転貸にとどまることや背信性の欠如を主張し、また、予備的に建物買取請求権の適用・準用を主張した。
あてはめ
1. 無断転貸が賃借地の一部であっても、契約の基礎となる信頼関係を破壊するに足りる以上、契約全部の解除原因となる。 2. 賃借物の使用者が誰であるかは賃貸人の利害に直結し、使用状況が土地に及ぼす経済的・物理的影響も無視できない。本件では、背信的行為と目し得ないような特段の事情は認められない。 3. 旧借地法10条の規定上、建物買取請求権者は土地賃借権とともに建物を譲り受けた者等に限定されており、転貸人に同条を準用すべき根拠もない。
結論
一部の無断転貸を理由とする賃貸借契約全部の解除は有効であり、転貸人による建物買取請求は認められない。
事件番号: 昭和34(オ)166 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人に無断で賃借権を譲渡し又は転貸した場合、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、賃貸人は民法612条に基づき契約を解除できる。 第1 事案の概要:賃借人Dは、賃貸人である被上告人に無断で本件土地の賃借権を譲渡し、またはこれを転貸した。また、Dは賃貸借契約成…
実務上の射程
無断転貸における解除の可否を論じる際、一部転貸であっても全部解除が可能であることを示す根拠として活用できる。また、背信理論を適用する際、使用者の変更が賃貸人の利害(土地への物理的影響等)に関わることを明示する際に有用である。建物買取請求権の主体については条文の文言通りに解釈すべきことを示している。
事件番号: 昭和36(オ)1325 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約解除後賃借人およびその転借人に窮状の起ることをもつて、右解除権の行使を権利濫用ということはできない。
事件番号: 昭和36(オ)1346 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 棄却
賃借土地の三分の一にすぎない土地を無断転貸しても、特別の事由のないかぎり、賃借地全部について契約解除ができる。
事件番号: 昭和42(オ)146 / 裁判年月日: 昭和43年2月1日 / 結論: 棄却
「推認」の語は、証拠によつて認定された間接事実を総合し、経験則を適用して主要事実を認定する場合に用いられる用語法であつて、証明度において劣る趣旨を示すものではない。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。