賃借土地の三分の一にすぎない土地を無断転貸しても、特別の事由のないかぎり、賃借地全部について契約解除ができる。
賃借土地の一部の無断転貸の場合に賃借土地全部についての解除を有効とした事例。
民法612条
判旨
賃借人が賃貸人に無断で賃借土地の一部を転貸した場合、たとえそれが全体の約3分の1にすぎないとしても、特段の事情のない限り、賃貸人との信頼関係を破壊するものと認められる。
問題の所在(論点)
土地の賃借人が、無断で賃借土地の約3分の1という一部のみを転貸した場合、民法612条2項による解除を制限する「信頼関係破壊の理論」の適用において、背信的行為と認めるべきか。
規範
民法612条2項に基づく解除が認められるためには、無断転貸が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合を除き、同条1項違反を理由とした解除権の行使が可能である。土地の一部のみの転貸であっても、それだけで直ちに信頼関係の破壊を否定することはできず、原則として背信性を肯定すべきである。
重要事実
賃借人(上告人)は、賃貸人に無断で、賃借している土地の約3分の1に相当する部分を第三者に転貸した。これに対し、賃貸人は無断転貸を理由として賃貸借契約の解除を主張した。上告人は、転貸部分が一部であること等を理由に信頼関係の破壊を否定しようとしたが、原審はこれを認めず解除を是認した。
事件番号: 昭和36(オ)1325 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約解除後賃借人およびその転借人に窮状の起ることをもつて、右解除権の行使を権利濫用ということはできない。
あてはめ
本件では、賃借人が賃借土地の約3分の1という、必ずしも僅少とはいえない範囲を無断で転貸している。このような無断転貸は、賃貸借契約の基礎となる当事者間の個人的信頼関係を侵害する客観的な態様といえる。したがって、一部転貸にとどまるという事情のみでは、背信性を否定する「特段の事情」にはあたらず、信頼関係を破壊するものと解するのが相当である。
結論
無断転貸が土地の一部(約3分の1)であっても、特段の事情がない限り信頼関係を破壊するものといえるため、賃貸人による解除は有効である。
実務上の射程
民法612条の無断転貸における信頼関係破壊の理論の適用範囲を画する。土地の一部転貸であっても、その割合が3分の1程度であれば原則として解除が認められることを示しており、答案上は、転貸の範囲の広狭のみならず、背信性を否定する他の具体的事実の有無を慎重に検討する際の基準として用いる。
事件番号: 昭和34(オ)386 / 裁判年月日: 昭和36年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借地の一部の無断転貸であっても、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、賃貸借契約全部を解除し得る。また、建物買取請求権は転貸人には認められない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)から借り受けていた賃借地の一部を、被上告人の承諾を得ることなく第三者に無断で転貸し…
事件番号: 昭和34(オ)166 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人に無断で賃借権を譲渡し又は転貸した場合、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、賃貸人は民法612条に基づき契約を解除できる。 第1 事案の概要:賃借人Dは、賃貸人である被上告人に無断で本件土地の賃借権を譲渡し、またはこれを転貸した。また、Dは賃貸借契約成…
事件番号: 昭和42(オ)440 / 裁判年月日: 昭和42年10月6日 / 結論: 棄却
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に転貸した土地が賃借土地の約一二分の一の部分にすぎない場合にも、特段の事情のないかぎり、賃貸人は右転貸を理由として賃貸借契約全部を解除することができる。
事件番号: 昭和42(オ)146 / 裁判年月日: 昭和43年2月1日 / 結論: 棄却
「推認」の語は、証拠によつて認定された間接事実を総合し、経験則を適用して主要事実を認定する場合に用いられる用語法であつて、証明度において劣る趣旨を示すものではない。