保険契約者が、保険会社の普通保険約款を承認のうえ保険契約を申し込む旨の文言が記載されている保険契約の申込書を作成して保険契約を締結したときは、反証のないかぎり、たとい保険契約者が盲目であつて、右約款の内容を告げられず、これを知らなかつたとしても、なお右約款による意思があつたものと推定すべきである。
火災保険普通保険約款の解釈
商法665条,民法第3編第2章第1節第1款
判旨
普通保険約款を承認して申し込む旨の記載がある申込書により保険契約を締結したときは、特段の反証がない限り、約款の内容を知らなくてもその約款による意思があったものと推定される。
問題の所在(論点)
保険契約時に約款の内容を具体的に認識していなかった場合、あるいは身体的理由(盲目)により内容を把握し得なかった場合であっても、申込書への署名・捺印等により約款の内容が契約内容に含まれるか。
規範
保険契約者が、普通保険約款を承認のうえ保険契約を申し込む旨の文言が記載されている保険契約申込書を作成して契約を締結したときは、反証のない限り、たとえ保険契約者が盲目であって約款の内容を告げられず、これを知らなかったとしても、なお右約款による意思があったものと推定すべきである。
重要事実
1. 被保険者Aは、保険会社(被上告人)との間で火災保険契約を締結した。2. 当該保険の申込書には、普通保険約款を承認のうえ申し込む旨の文言が印刷されており、Aはこれを作成・提出していた。3. 実際の約款には、被保険者と世帯を同じくする家族の故意による損害について保険金を支払わない旨の免責条項が含まれていた。4. Aは、自身が盲目であり約款の内容を告げられておらず、その内容を知らなかったとして、約款の合意を争った。
あてはめ
1. 本件では、Aが作成した火災保険契約申込書に「普通保険約款を承認のうえ火災保険契約を申し込む」旨の文言が明記されている。2. このような申込書の提出は、約款による契約締結の意思を表示したものと評価される。3. したがって、たとえAが盲目であり約款の具体的な条項(家族の故意による免責等)を知らなかったとしても、特段の反証がない限り、約款を契約内容とする意思があったと推定するのが相当である。
結論
約款の規定は本件保険契約の内容を構成する。したがって、約款所定の免責条項が適用される。
実務上の射程
大量・迅速な取引が求められる約款契約において、定型的な意思表示(申込書への承認文言)があれば、各条項の具体的認識がなくとも契約内容に取り込まれるとする「組入」の法理を示した。現在では改正民法548条の2(定型約款)により明文化されているが、同条の要件を満たさない場合の意思推定の論理として依然として参考になる。
事件番号: 平成14(受)218 / 裁判年月日: 平成15年12月9日 / 結論: 破棄自判
1 火災保険契約の申込者は,特段の事情が存しない限り,同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分,不適切な点があったことを理由として,慰謝料を請求することはできない。 2 火災保険契約の申込者が,同契約を締結するに当たり,同契約に…