火災保険の保険金を受領するにあたり、保険契約者兼被保険者が保険者に対して差し入れた「後日保険者に保険金支払の義務のないことが判明したときは、いつさいの責任を負い、保険者に迷惑をかけない」旨の誓約文言は、保険者に対し、不当利得返還義務の範囲を特約するものであつて、有効である。
保険金受領の際差し入れられた「後日保険者に保険金支払の義務のないことが判明したときは、いつさいの責任を負い、保険者に迷惑をかけない」旨の誓約文言の効力
民法703条,民法91条,商法641条
判旨
保険証券に細字で印刷された火災保険普通保険約款であっても当然に無効とはならず、保険金受領時に「支払義務がないことが判明した際に全額を返還する」旨の特約を差し入れた場合、不当利得返還義務の範囲はその特約に従う。
問題の所在(論点)
1. 細字で印刷された保険約款の効力が認められるか。 2. 保険金受領時に差し入れた「返還を約する領収証」により、善意の利得者であっても全額の返還義務を負うか。
規範
1. 保険証券に細字で印刷された約款であっても、当然に例文として無効になるものではなく、適用を排除する合意がない限り契約内容を構成する。 2. 保険金受領に際し、後に支払義務のないことが判明した場合には受領金員と同額を返還する旨を記名捺印して差し入れた書面は、返還義務の範囲を定める有効な特約として機能する。
重要事実
火災保険契約の被保険者である上告人は、火災発生後に保険会社(被上告会社)から保険金を受領した。その際、「後日貴社に保険金支払の義務のないことが判明したときは……一切の責任を負い、貴社に御迷惑をおかけしない」旨が記載された領収証に記名捺印して差し入れた。しかし、後の調査で、本件火災は上告人と世帯を同じくする家族およびその内縁の夫の故意(放火)による損害であることが判明した。保険約款には同居家族の故意による損害を免責とする規定があったため、保険会社は不当利得として保険金の返還を請求した。
あてはめ
1. 約款の効力について、単に細字で印刷されていることのみをもって例文として無効と解すべき根拠はなく、適用を排除する特約も認められないため、約款の免責条項は有効である。 2. 同居家族らの故意による火災は、約款の免責事由に該当する。上告人が主張する「放火の目的が保険金の取得にあった」という事由は、免責規定の適用を妨げるものではない。 3. 返還義務について、保険金受領時に「支払義務がないと判明したときは全額返還する」旨の特約を締結している。この特約に基づき、上告人は受領した保険金と同額の返還義務を負い、その請求を拒むことはできない。
結論
保険会社による不当利得返還請求を認容する。上告人は、特約に基づき受領した保険金全額を返還する義務を負う。
実務上の射程
約款の「例文解釈(無効論)」を否定し、約款の拘束力を認める際の根拠となる。また、不当利得における現存利益(民法703条)の制限を、受領時の特約によって加重できることを示した実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和61(オ)1194 / 裁判年月日: 平成3年9月3日 / 結論: 破棄差戻
債務者所有の甲不動産と第三者所有の乙不動産とが共同抵当の関係にある場合において、債権者が甲不動産に設定された抵当権を放棄するなど故意又はけ怠によりその担保を喪失又は減少したときは、その後の乙不動産の譲受人も債権者に対して民法五〇四条に規定する免責の効果を主張することができる。
事件番号: 平成21(受)247 / 裁判年月日: 平成21年11月9日 / 結論: 破棄自判
民法704条後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない。
事件番号: 平成11(受)766 / 裁判年月日: 平成13年3月27日 / 結論: その他
1 加入電話契約者以外の者がいわゆるダイヤルQ2事業における有料情報サービスを利用した場合には,加入電話契約者は,情報料債務を自ら負担することを承諾しているなど特段の事情がない限り,情報提供者に対する情報料の支払義務を負わない。 2 加入電話契約者甲以外の者が利用したいわゆるダイヤルQ2事業における有料情報サービスに係…