債務者所有の甲不動産と第三者所有の乙不動産とが共同抵当の関係にある場合において、債権者が甲不動産に設定された抵当権を放棄するなど故意又はけ怠によりその担保を喪失又は減少したときは、その後の乙不動産の譲受人も債権者に対して民法五〇四条に規定する免責の効果を主張することができる。
共同抵当の関係にある不動産の一部に対する抵当権の放棄とその余の不動産の譲受人が民法五〇四条所定の免責の効果を主張することの可否
民法504条
判旨
共同抵当権者が故意または過失により一部の担保を喪失・減少させた場合、他の抵当不動産の第三取得者およびその後の譲受人は、民法504条に基づき、代位により償還を受けられなくなった限度で免責される。担保の喪失後に不動産を譲り受けた者であっても、既に生じた免責の効果を承継して債権者に主張することが可能である。
問題の所在(論点)
債権者が共同担保の一部を放棄した後に、他の抵当不動産を取得した譲受人は、民法504条の規定に基づく免責(担保喪失による責任の消滅)を債権者に対して主張することができるか。担保喪失時の所有者に限られるのか、その後の譲受人も含まれるのかが問題となる。
規範
民法504条は債権者の担保保存義務違反による代位権者の利益侵害を防止する規定である。抵当不動産の第三取得者は、抵当権により把握された交換価値の限度で責任を負うにすぎないため、債権者が故意・過失により担保を喪失・減少させたときは、同条により償還不能となった限度で当該不動産の負担すべき責任は当然に消滅する。この責任消滅の効果は、その後に不動産が第三者に譲渡されても影響を受けず、譲受人は免責の効果を承継して主張できる。
重要事実
Dおよび上告人は、Fに対し不動産(G物件)を譲渡担保として提供したが、後にFの破産管財人Hが否認権を行使し、G物件の所有権はF(破産財団)に帰属した。これに先立ち、訴訟相手のJ技研はG物件、K物件、L物件に共同抵当権を設定していた。債権者(被上告人)は、G物件の所有権がFに帰属した後の昭和51年、共同担保であるK物件の抵当権を放棄した。その後、上告人は和解によりG物件の所有権を取得したが、被上告人がG物件の競売代金から配当を受けたため、上告人は民法504条による免責を理由に不当利得返還を請求した。
あてはめ
本件では、FがG物件の否認登記を経由した時点で抵当不動産の第三取得者となっていた。その後、債権者が共同担保であるK物件の抵当権を放棄したことにより、FはK物件から償還を受けられたはずの限度でG物件上の責任を免れたといえる。この免責の効果はG物件という「物」の負担を減縮させるものであるから、その後、和解によってG物件を取得した上告人も、前主Fに生じた免責の効果を承継する。したがって、上告人は免責により減縮された責任の限度を超えて配当を受けた債権者に対し、不当利得を主張し得る。
結論
上告人は、被上告人がK物件の抵当権を放棄したことによる免責の効果を主張できる。原審が譲受人による免責主張を否定した判断には民法504条の解釈に誤りがあるため、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
共同抵当における担保保存義務(民法504条)の範囲を、担保喪失時の所有者だけでなく「その後の譲受人」にも広げた点に実務上の意義がある。答案では、保証人の免責(463条等)との対比や、物上保証・第三取得者の代位権保護の文脈で使用する。また、担保喪失後に現れた後続の利害関係人をも保護する判断枠組みとして、物権的な責任の減縮を論述する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和30(オ)484 / 裁判年月日: 昭和32年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権者が優先弁済権を有する債権であっても、法律上の根拠に基づき優先的に金員を収納し得る立場にある者に対しては、不当利得返還請求を行うことはできない。 第1 事案の概要:上告人は対象物件に対して抵当権を有していた。一方で、被上告人は当該物件から生じた金員を収納した。上告人は、自らの抵当権に基づく優…
事件番号: 平成21(受)247 / 裁判年月日: 平成21年11月9日 / 結論: 破棄自判
民法704条後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない。
事件番号: 昭和62(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 破棄自判
債権者が第三者所有の不動産の上に設定を受けた抵当権が不存在である.にもかかわらず、右抵当権の実行により第三者が不動産の所有権を喪失したときは、第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた右債権者に対し不当利得返還請求権を有する。