不当利得返還債務の弁済として給付をした者が、民法七〇三条に基づいてその返還を請求する場合には、同条所定の「法律上ノ原因ナクシテ」についての主張・立証責任を負う。
不当利得返還債務の弁済として給付をした者が民法七〇三条に基づいてその返還を請求する場合と「法律上ノ原因ナクシテ」についての主張・立証責任
民法703条
判旨
不当利得返還請求における「法律上の原因がないこと」の主張・立証責任は、請求を認容させようとする請求者側が負う。生命保険金の受取人変更の有効性が争点となる場合も、請求者は受取人変更権の不存在や変更意思表示の不存在を立証しなければならない。
問題の所在(論点)
不当利得返還請求訴訟(民法703条)において、利得に「法律上の原因がないこと」の主張・立証責任は、請求者と利得者のいずれが負うか。特に、生命保険金の受取人変更の有効性が争われる場面での立証責任の所在が問題となる。
規範
民法703条に基づき不当利得の返還を請求する者は、利得者が「法律上ノ原因ナクシテ」当該利得をしたとの事実を主張・立証すべき責任を負う。本要件は権利根拠規定の一部であり、請求者が立証責任を負うのが原則である。
重要事実
亡Dが締結した生命保険契約において、当初の受取人は被上告人であった。しかし、Dは受取人を上告人に変更する意思表示を行い、上告人が保険金を受領した。被上告人は、上告人による保険金の受領は不当利得に当たるとして返還を求めた。原審は、受取人変更には変更権の留保が必要であるとした上で、変更権留保の事実を上告人が主張・立証していないことを理由に、被上告人の請求を認容した。
あてはめ
本件では、被上告人が「法律上の原因がないこと」の主張・立証責任を負う。具体的には、本件保険契約においてDが保険金受取人の変更権を留保していなかったこと、あるいはDによる受取人変更の意思表示がなされなかったことを、請求の原因事実として被上告人が主張・立証すべきである。上告人が変更権の存在を立証できなかったからといって、直ちに法律上の原因がないと断じることは、不当利得の要件に関する立証責任の分配を誤ったものといえる。
結論
不当利得返還請求における「法律上の原因がないこと」の主張・立証責任は請求者が負う。したがって、請求者である被上告人が変更権の不存在等を立証すべきであり、これを尽くさず上告人の立証不足のみを理由に請求を認容した原判決は破棄される。
実務上の射程
不当利得の一般原則を確認した判例であり、答案上は「法律上の原因がないこと」のあてはめを行う際の前提として立証責任の所在を明示するのに用いる。実務上、保険金受取人の変更の有効性が争われる事案では、旧受取人が不当利得を主張する場合、旧受取人側が変更の無効(変更権の欠如や意思無効など)を立証しなければならない点に注意が必要である。
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