旧利息制限法のもとにおいては、債務者によつて利息として任意に支払われた金員が、同法所定の利率による金額を超えている場合であつても、超過分を元本の弁済に充当すべきでないことは、当裁判所の判例(昭和二八年(オ)第二九〇号同三〇年二月二二日第三小法廷判決民集九巻二号二〇九頁、昭和三七年(オ)第八五六号同三八年七月一一日第一小法廷判決裁判集民事六七号五三頁、昭和四一年(オ)第七三七号同年一二月六日第三小法廷判決参照)とするところであり、当裁判所昭和三五年(オ)第一一五一号同三九年一一月一八日大法廷判決(民集一八巻九号一八六八頁)は、利息制限法(昭和二九年法律一〇〇号)に関するものであり、これによつて旧利息制限法に関する右判例が変更されたものとはいえない。
旧利息制限法超過の利息支払と元本充当
旧利息制限法
判旨
当事者が充当の指定をせずに弁済した場合、制限超過利息への充当は認められず、法が認める利息制限法所定の利率の範囲を超える部分は当然に残存元本に充当される。
問題の所在(論点)
旧利息制限法の適用下において、当事者が弁済の充当を指定せずに支払った場合(法定充当となる場合)、制限超過利息への充当が認められるか、あるいは当然に元本に充当されるか。
規範
当事者が弁済の充当を指定せずに支払を行い、法律上の充当(法定充当)をすべき場合には、その支払分を約定利息のうち利息制限法所定の利率を超える部分に充当することはできない。したがって、当該超過部分は当然に残存元本の弁済に充当されるものと解すべきである。
重要事実
上告人(債権者)は、被上告人ら(債務者)に対し、昭和28年に50万円を利息月3分(年36%)の約定で貸し付けた。被上告人らは、(1)当初は月3分の約定利息として指定し弁済を継続していたが、(2)その後、計5回(計59万4000円)の弁済については、充当の指定をせずに行った。上告人は、これら指定のない弁済も約定利息(制限超過分を含む)に充当されたと主張して、残元利金の支払を求めた。
あてはめ
本件における後半5回の弁済(ホ〜リ)は、弁済充当の指定なくなされたものである。この場合、約定の月3分という利息は利息制限法の制限を超えるものである以上、法定充当において制限超過部分を利息に充当することは許されない。したがって、これらの弁済金は、まず同法所定の年1割(当時の制限)の利息に充当され、その残余はすべて元本の弁済に充当されるべきである。計算上、最後の弁済時にはすでに元利合計が完済されており、むしろ過払金が発生している状態であったといえる。
結論
弁済充当の指定がない場合、制限超過利息への充当は認められず元本に充当されるため、本件貸金債務は既に消滅しており、債権者の請求は認められない。
実務上の射程
本判決は、任意支払(指定充当)がある場合には超過利息の支払を有効としていた旧利息制限法下のものであるが、指定がない場合の「法定充当」においては、当然に元本充当されることを示した点に意義がある。現行利息制限法下では、指定の有無にかかわらず超過利息は当然に元本に充当される(最判昭39.11.18参照)ため、本判決の法理は現行法下での「当然の元本充当」を補強する実務上の基礎となっている。
事件番号: 昭和36(オ)1089 / 裁判年月日: 昭和40年2月18日 / 結論: 破棄差戻
債務者が、利息制限法第一条の制限をこえる利息、損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は民法第四九一条により残存元本に充当されるものと解するのを相当とする。