財産引受が定款に記載がなく無効である場合には、会社側だけでなく、譲渡人もその無効を主張することができる。
財産引受の無効は譲渡人も主張することができるか
商法168条
判旨
定款に財産引受けの記載がないことによる無効は、会社側だけでなく、当該財産の譲渡人も主張することができる。
問題の所在(論点)
旧商法168条1項6号(現行会社法28条2号)に規定される「財産引受け」について、定款に記載がないために生じる無効を、会社以外の当事者(譲渡人)から主張することができるか。
規範
定款に記載のない財産引受けは無効であり、その無効は会社側のみならず、相手方である譲渡人の側からも主張することが可能である。
重要事実
上告人と相手方との間で財産引受けに該当する契約が締結されたが、当該会社の定款にはその旨の記載が欠けていた。この定款記載の欠落を理由として、譲渡人(または会社以外の当事者)が当該契約の無効を主張した事案である。
あてはめ
最高裁判所は、過去の判例(昭和28年12月3日第一小法廷判決)を踏襲し、定款への記載を欠く財産引受けが無効とされる場合、その無効主張の権利は会社側に限定されるものではないと解した。したがって、譲渡人による無効主張も法的に認められるべきである。
事件番号: 昭和33(オ)592 / 裁判年月日: 昭和36年10月17日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】設立中の会社の代表者が、会社の設立を条件として設立後の営業に必要な財産を取得する契約(財産引受け)を締結した場合、定款にその記載がなければ、当該契約は設立後の会社に対して効力を有しない。 第1 事案の概要:株式会社Dの設立にあたり、発起人組合の代表者が、将来の材料置場および事務所用地とする目的で本…
結論
定款に財産引受けの記載がないことによる無効は、譲渡人からも主張できる。本件上告は棄却された。
実務上の射程
変態設立事項(会社法28条)の記載を欠く場合の効力に関する基本判例である。会社法28条各号の趣旨は会社財産の充実にあるが、判例は、会社保護のみを目的とする相対的無効ではなく、当然に効力を生じない絶対的無効として構成している点に注意が必要である。答案上では、取引の安全を重視する信義則(権利濫用・失効の原則)による制限の可否とセットで検討されることが多い。
事件番号: 昭和44(オ)477 / 裁判年月日: 昭和44年9月2日 / 結論: 棄却
株式会社は、法令がとくに取締役会の決議事項であると定めたものを除いて、取締役会に属する業務執行に関する意思決定の権限を、定款をもつて、代表取締役に委任することができる。
事件番号: 昭和26(オ)510 / 裁判年月日: 昭和28年12月3日 / 結論: 棄却
一 定款に記載のない財産引受は、たとえ会社成立後株主総会が特別決議をもつてこれを承認しても、有効にはならない。 二 財産引受が無効である場合には、会社側だけでなく、譲渡人もその無効を主張することができる。