一 定款に記載のない財産引受は、たとえ会社成立後株主総会が特別決議をもつてこれを承認しても、有効にはならない。 二 財産引受が無効である場合には、会社側だけでなく、譲渡人もその無効を主張することができる。
一 定款に記載のない財産引受に対する株主総会の承認決議の効力 二 財産引受の無効は譲渡人も主張することができるか
商法168条1項6号,商法246条
判旨
定款に記載のない財産引受けは、会社の保護規定であるにとどまらず、公証人の認証という厳格な手続を欠くため絶対的に無効であり、会社のみならず相手方からもその無効を主張できる。また、事後の株主総会による承認決議のみでは、無効な財産引受けの瑕疵は治癒されない。
問題の所在(論点)
1. 定款に記載のない財産引受けの無効は、会社側のみならず相手方(売主)からも主張できるか。 2. 会社成立後の株主総会による特別決議によって、定款記載のない財産引受けの瑕疵が治癒され、有効となるか。
規範
財産引受け(会社法28条2号相当)が定款に記載されない限り無効とされるのは、現物出資規制の潜脱を防止し、会社の資本的基礎を確保するという公益的な目的による。したがって、この無効は会社側のみが主張しうる相対的なものではなく、契約のいずれの当事者からも主張可能な絶対的無効である。また、事後の総会決議による追認によっても、当初から無効な契約が有効となることはない。
重要事実
発起人が会社設立のために特定の財産を譲り受ける契約(財産引受け)を締結したが、当該事項が公証人の認証を受けた定款に記載されていなかった。その後、会社は成立し、会社側でこの契約を承認する趣旨の特別決議(商法246条、現・会社法467条等参照)が行われた。しかし、売主(被上告人)側がこの財産引受けの無効を主張し、争いとなった。
事件番号: 昭和27(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和29年11月26日 / 結論: 棄却
定款に記載された現物出資およびその履行が真実有効になされたかどうかは、人証その他一般の証拠から判定し得るのであつて、必ずしも会社設立のため作成された書類のみによつて決定しなければならぬものではない。
あてはめ
財産引受けに関する規制は、現物出資の潜脱を防ぐための厳重な規定であり、定款記載を欠く場合は効力を有しない。これは会社の保護のみを目的とするものではないため、無効の当然の結果として、売主である被上告人も無効を主張できると解される。また、会社成立後に事後設立の手続に準じた新たな売買契約が成立したと認められない限り、単に既存の無効な契約を「承認」する決議を行うだけでは、有効な契約に転じることはない。
結論
定款に記載のない財産引受けは無効であり、その無効は相手方からも主張できる。また、事後の株主総会決議による追認による瑕疵の治癒は認められない。
実務上の射程
変態設立事項の定款記載を欠く場合の効力を論じる際の基礎となる判例である。「絶対的無効」の性質を持つため、相手方からの主張や事後の追認を否定する文脈で使用する。実務上、事後設立の手続(会社法467条1項5号)を別途適正に踏まない限り、設立前の瑕疵は救済されない点に注意を要する。
事件番号: 昭和42(オ)1317 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 棄却
財産引受が定款に記載がなく無効である場合には、会社側だけでなく、譲渡人もその無効を主張することができる。
事件番号: 昭和39(オ)259 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
創立総会において決議することができるいわゆる変態設立事項の変更は、その縮小または削除に限られ、あらたに変態設立事項に関する定めを追加し、または既存の規定を拡張することは許されない。
事件番号: 昭和26(オ)646 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
仮装の売買契約に基き不動産の所有権移転登記を受けた者が、その後真実の売買契約によりその所有権を取得し、右登記が現在の実体的権利状態と合致するに至つたときは、その時以後、買主は右所有権の取得を第三者に対抗することができる。
事件番号: 昭和35(オ)948 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
一 法律行為の効力は、その行為当時施行されていた法令によつて定められるのであり、その後に法令の改廃が行われても、過去の法律行為の効力に影響を及ぼさない。 二 所属宗派の主管者の承認を欠くため無効であつた寺の不動産処分行為は、宗教法人の施行によつて有効とはならない。