一 法律行為の効力は、その行為当時施行されていた法令によつて定められるのであり、その後に法令の改廃が行われても、過去の法律行為の効力に影響を及ぼさない。 二 所属宗派の主管者の承認を欠くため無効であつた寺の不動産処分行為は、宗教法人の施行によつて有効とはならない。
一 法律行為の効力判定の基準時 二 所属宗派の主管者の承認を欠く寺の不動産処分行為と宗教法人の施行
宗教法人令11条,宗教法人法24条
判旨
宗教法人令に基づく不動産処分が主管者の承認を欠く場合、法人の代表者が故意に承認を求めなかったとしても、当該処分は原則として無効であり、その後の新法施行によっても瑕疵は治癒されない。
問題の所在(論点)
1. 宗教法人が不動産処分の承認を故意に求めない場合、民法1条等の観点から処分を有効とすべきか。2. 行為当時に無効であった処分行為が、その後の法令改正により要件が緩和された場合、当然に有効となるか。3. 未登記の不動産であっても宗教法人令上の処分制限の対象となるか。
規範
1. 法律行為の効力は行為当時の法令によって定められ、その後の法令改廃は過去の法律行為の効力に影響を及ぼさない。2. 宗教法人令11条1項所定の不動産処分において、主管者の承認を欠く行為は、同条2項に基づき無効となる。3. 法人の代表者が故意に承認を求めない場合であっても、信義則(民法1条)の適用により直ちに有効となるものではない。
重要事実
被上告人である寺院(宗教法人)は、昭和23年1月当時、未登記であった本件土地を上告人らに売却した。当時の宗教法人令11条1項では、不動産処分には所属宗派の主管者の承認が必要とされていたが、本件売買ではこの承認を欠いていた。その後、昭和24年に寺院は保存登記を行い、さらに昭和26年には主管者の承認を要件としない宗教法人法が施行された。上告人らは、寺院側が故意に承認を求めなかったことや、新法施行により無効な行為が有効に転じると主張して、売買の有効性を争った。
事件番号: 昭和35(オ)1365 / 裁判年月日: 昭和37年9月13日 / 結論: 棄却
土地の地目変更の登記申請書に農地法第四条第一項による都道府県知事の許可を証する書面を添付しない違法があつても、登記官吏において右申請を受理して土地の地目変更の登記をしたときは、右登記は、右の違法により当然に無効となるものではない。
あてはめ
1. 宗教法人令11条2項が承認を欠く処分を無効と明言している以上、主管者が故意に承認を求めない事情があっても無効であることに変わりはない。相手方の保護は同条3項(善意無過失)の救済規定によるべきであり、民法1条を根拠に当然に有効とはならない。2. 本件売買は昭和23年に行われており、行為当時の法令である宗教法人令が適用される。新法(宗教法人法)の施行は過去の瑕疵を治癒させるものではない。3. 処分制限の趣旨は法人の財産基盤の保護にあるから、未登記であっても法人の所有に属する以上、同条の適用を受ける。
結論
本件売買契約は、主管者の承認を欠くため宗教法人令に基づき無効である。その後の宗教法人法施行によっても有効とはならず、本件土地が売買当時に未登記であっても結論に影響しない。
実務上の射程
法令適用の基準時に関する原則(行為時法主義)を示すとともに、宗教法人の代表者が意図的に手続を怠った場合でも、強行法規的な性質を持つ処分制限規定の効力が維持されることを確認した。実務上は、信義則による無効主張の制限が極めて限定的であることを示す一例となる。
事件番号: 昭和45(オ)1239 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 棄却
宗教法人法二四条但書の規定は、善意であつても重大な過失のある相手方または第三者までも保護する趣旨のものではないと解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)845 / 裁判年月日: 昭和32年7月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分は真実の所有者に対して行うべきであるが、登記簿上の所有者に対し確定した買収処分は、それが登記名義人に対してなされたという一事をもって当然無効とはならない。また、自作農創設特別措置法28条にいう「自作をやめようとするとき」とは、必ずしもその旨の意思表示を要するものではない。 第1 事案…
事件番号: 昭和42(オ)576 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 棄却
一、宗教法人が、宗教法人法第二四条本文に掲げる財産を処分するに当たつてした同法第二三条の公告が、その時期、期間などの点において、同条および右宗教法人の規則の定と相違する場合に、当該行為の効力を判断するに当たつては、公告によつて行為の要旨を信者その他の利害関係人に周知させ、不当な処分を防止しようとする同法の趣旨が維持され…
事件番号: 昭和33(オ)596 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政上の許可を要する契約が許可を得ないまま合意解除され、その後に法的規制が撤廃された場合、改めて締結された新契約の効力は、旧契約時の不許可に影響されることなく有効である。 第1 事案の概要:上告人A1と被上告人は、昭和25年5月に土地建物の売買契約を締結したが、当時は外国政府の権利取得に外資委員会…