判旨
行政上の許可を要する契約が許可を得ないまま合意解除され、その後に法的規制が撤廃された場合、改めて締結された新契約の効力は、旧契約時の不許可に影響されることなく有効である。
問題の所在(論点)
旧契約時に存在した法的規制(許可制)が撤廃された後に締結された新契約の効力、および、新契約の締結意思や代金額に関する「要素の錯誤」の成否が問題となる。
規範
契約の有効性および錯誤の判断について、①行政上の許可制が撤廃された後に締結された契約は、過去の同一目的の契約における不許可の事実にかかわらず、独立してその有効性を判断すべきである。②動機の錯誤(本件では売買の意思や代金額に関する錯誤)が認められるためには、法律行為の内容にいかなる錯誤があるかについての具体的陳述を要し、客観的な取引事情に照らして代金が不当に低額といえない場合には、要素の錯誤は否定される。
重要事実
上告人A1と被上告人は、昭和25年5月に土地建物の売買契約を締結したが、当時は外国政府の権利取得に外資委員会の承認を要する政令が存在し、承認を得ていなかった。その後、昭和27年に当該規制が変更され、中華民国は承認を要する外国政府から除外された。同年12月8日、両者は旧契約を合意解除した上で、改めて新契約を締結。代金は既払の250万円を充当し、別途諸費用50万円を支払う合意がなされた。上告人側は、新契約締結の意思を欠いていたこと、および代金額に錯誤があったとして、新契約の無効を主張した。
あてはめ
まず、昭和27年の新契約締結時には法改正により大蔵大臣の指定から中華民国が除外されており、不動産取得に許可は不要であった。したがって、旧契約の無効事由を問うまでもなく、新契約は有効に成立する。次に、錯誤の主張について、A1には旧契約を解除して新契約をなす意思がないとの主張は、法律行為の内容に関する具体的陳述を欠く。また、代金額についても、当時建物に留学生が入居していた等の特殊事情を考慮すれば、既払金に50万円を加えた額は不当に低額とは認められず、A1の承諾も得られている。よって、意思表示に要素の錯誤があるとはいえない。
結論
本件売買契約は有効であり、要素の錯誤も認められないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。
実務上の射程
契約の巻き直し(合意解除と再契約)が行われた際、新契約時点での法令に適合していれば、旧契約時の瑕疵は治癒されるという実務上の処理を肯定した点に意義がある。錯誤の主張については、具体的な表示意思と内心的意思の不一致を主張立証する必要があることを示している。
事件番号: 昭和35(オ)948 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
一 法律行為の効力は、その行為当時施行されていた法令によつて定められるのであり、その後に法令の改廃が行われても、過去の法律行為の効力に影響を及ぼさない。 二 所属宗派の主管者の承認を欠くため無効であつた寺の不動産処分行為は、宗教法人の施行によつて有効とはならない。
事件番号: 昭和33(オ)943 / 裁判年月日: 昭和35年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、その自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるときは、適法に認められる。また、付随的義務の不履行を理由とする売買契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:本件土地の売買において、履行期等に関する特約の有無が争点となった。控訴代理人は当初、特約が存在する旨の準備書面を提…
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和35(オ)1365 / 裁判年月日: 昭和37年9月13日 / 結論: 棄却
土地の地目変更の登記申請書に農地法第四条第一項による都道府県知事の許可を証する書面を添付しない違法があつても、登記官吏において右申請を受理して土地の地目変更の登記をしたときは、右登記は、右の違法により当然に無効となるものではない。