土地の地目変更の登記申請書に農地法第四条第一項による都道府県知事の許可を証する書面を添付しない違法があつても、登記官吏において右申請を受理して土地の地目変更の登記をしたときは、右登記は、右の違法により当然に無効となるものではない。
登記申請書類の登記の効力。
不動産登記法49条8号,農地法4条1項
判旨
不動産登記の申請手続に違法があっても、一旦登記がなされた以上は、その手続的瑕疵のみを理由として当然に登記が無効となるものではない。
問題の所在(論点)
不動産登記法に基づき土地の地目変更登記を申請する際、農地法上の許可証等の必要書類を欠くという手続上の違法がある場合、そのことにより完了した登記は当然に無効となるか。
規範
不動産登記手続において、法令上の添付書類を欠くなどの申請上の違法があったとしても、登記官がこれを受理して登記を完了した場合には、当該登記は手続上の瑕疵のみによって当然に無効とはならない。
重要事実
上告人は、土地の地目変更登記がなされた際、農地法4条1項に基づく都道府県知事の許可を証する書面が提出されていなかったと主張した。しかし、実際には登記官によって当該地目変更の登記が受理され、完了していた。
事件番号: 昭和35(オ)948 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
一 法律行為の効力は、その行為当時施行されていた法令によつて定められるのであり、その後に法令の改廃が行われても、過去の法律行為の効力に影響を及ぼさない。 二 所属宗派の主管者の承認を欠くため無効であつた寺の不動産処分行為は、宗教法人の施行によつて有効とはならない。
あてはめ
本件では、農地法4条1項の許可を証する書面を提出せずに地目変更登記がなされたという手続的違法が指摘されている。しかし、登記制度の目的は現在の実体的権利関係を公示することにあり、一旦登記がなされた以上は、申請手続の適否よりも実体的権利関係との合致が重視される。したがって、申請に瑕疵があったとしても、その事実のみをもって直ちに登記が無効と帰結されることはない。
結論
登記申請手続に違法があっても、登記が完了した以上は当然に無効とはならないため、上告を棄却する。
実務上の射程
登記の有効性は原則として実体権利関係との合致によって決まるという「実体関係符合の原則」を前提とする。答案上では、登記申請手続の瑕疵(添付書類の不足等)を理由に登記の抹消を請求する場面において、本判例を引用し、手続的瑕疵のみでは登記は無効にならないことを論証する際に使用する。
事件番号: 昭和35(オ)604 / 裁判年月日: 昭和38年4月2日 / 結論: 棄却
一、自作農創設特別措置法により政府より売渡を受けた農地でも知事の許可または農地委員会の承認があれば、その所有権を他に移転できる。 ニ、昭和二六年一月二五日に締結された農地売買契約につき、所有権移転の時期を昭和三一年一月二四日とし売買代金額も実際と異つた額が許可申請書に記載されていたとしても、原判示のもとでは、右に対する…
事件番号: 昭和30(オ)995 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を停止条件として締結された農地の売買契約は、無効ではない 二 土地の買主が約定の履行期後、売主に対し、しばしばその履行を求め、かつ売主において右土地の所有権移転登記手続をすれば、何時でも支払えるよう残代金の準備をしていたときは、民法第五五七条にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当である
事件番号: 昭和37(オ)291 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
甲乙間の農地訴有権移転の許可申請書に添付されている農地売買契約書表示の契約年月日において甲乙間に直接売買がなされた事実はなく、真実は、前示年月日以前に甲丙間に売買契約が成立していたところ、丙の右契約にもとづく権利を乙が譲り受け、甲乙間に当該農地の所有権移転がなされるに至つた場合にあつては、申請書添付書類に右のような真実…
事件番号: 昭和33(オ)596 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政上の許可を要する契約が許可を得ないまま合意解除され、その後に法的規制が撤廃された場合、改めて締結された新契約の効力は、旧契約時の不許可に影響されることなく有効である。 第1 事案の概要:上告人A1と被上告人は、昭和25年5月に土地建物の売買契約を締結したが、当時は外国政府の権利取得に外資委員会…