一、自作農創設特別措置法により政府より売渡を受けた農地でも知事の許可または農地委員会の承認があれば、その所有権を他に移転できる。 ニ、昭和二六年一月二五日に締結された農地売買契約につき、所有権移転の時期を昭和三一年一月二四日とし売買代金額も実際と異つた額が許可申請書に記載されていたとしても、原判示のもとでは、右に対する知事の許可処分は有効である。
一、創設自作地の譲渡可能性 ニ、実際の農地売買契約の日時代金額と異る記載をもつてした許可申請書に基づく農地所有権移転についての知事の許可処分の効力
判旨
政府から売渡を受けた農地の転売は、農地調整法上の知事の許可等があれば可能であり、許可申請書に代金額や移転時期の相違があっても、契約自体の同一性が認められる限り、当該許可により売買の効力は発生する。
問題の所在(論点)
1. 政府から売渡を受けた農地の転売が可能か。2. 許可申請書に実際の契約と異なる代金額等の記載がある場合、その許可によって当該契約の効力が発生するか(契約の同一性と許可の有効性)。
規範
自作農創設特別措置法により売渡を受けた農地であっても、農地調整法4条に基づき都道府県知事等の許可を受ければ、その所有権を移転し得る。また、農地法(旧農地調整法)上の許可申請書において、実際の契約内容と異なる代金額や移転時期の記載がなされた場合であっても、契約締結の日時等の基本的事項に虚偽がなく、諸般の事情に照らして当該売買契約に対する許可申請であると認められる限り、その許可処分によって当該売買契約の効力は発生する。
重要事実
上告人は、政府から自作農創設特別措置法に基づき売渡を受けた本件農地を、被上告人に対し昭和26年に売り渡した。昭和31年、両当事者の意思に基づき山形県知事に対して所有権移転許可申請がなされ、同年6月に許可処分が下された。しかし、その申請書には実際の売買契約とは異なる代金額や、契約に取り決めのない移転時期が記載されていた。上告人は、当該許可は本件契約に対するものではなく、また法令の制限により所有権移転は認められないと主張して、売買の効力を争った。
事件番号: 昭和35(オ)488 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買における知事の許可は、売買による所有権移転の効力発生要件に過ぎず、売買契約そのものの成立要件ではない。したがって、農地売買契約の成立日は、知事の許可の日ではなく、現実に売買の合意がなされた日となる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で農地の売買契約が締結され、その後、当該売買に基…
あてはめ
まず、農地調整法4条および自特法28条を解釈するに、知事の許可があれば自特法による売渡農地の所有権移転は可能である。次に、本件許可申請について検討すると、代金額や移転時期の記載が実際の契約と相違している事実は認められる。しかし、契約締結日時の記載には虚偽がなく、申請自体も双方の合意に基づきなされている。このような事情を考慮すれば、当該申請および許可は、実在する本件売買契約を対象としたものと評価できる。したがって、形式的な不一致があるからといって、許可の対象が別個の契約であると解すべきではない。
結論
本件売買契約は県知事の許可処分によって有効に効力を生じた。したがって、農地所有権の移転を認めた原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
農地法等の行政上の許可を停止条件とする契約において、申請書類の不備や形式的記載の齟齬が、実体法上の契約の有効性に直ちに影響しないことを示した事例である。答案作成上は、許可等の行政手続における記載の不一致が問題となる場面で、契約の同一性が維持されているかを判断する際の考慮要素(当事者の意思、締結日時の正確性等)として援用できる。
事件番号: 昭和34(オ)642 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約において、地目が畑であり実態が農地であると認められる場合には、その性質に基づき適法な事実認定がなされるべきである。 第1 事案の概要:被上告人らは、上告人から本件土地を北海道知事の許可を停止条件として買い受けた。本件土地の地目は「畑」であり、原審において…
事件番号: 昭和36(オ)360 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
控訴人が「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。被控訴人の附帯控訴を棄却する。」旨の裁判を求め、第一審で棄却された反訴請求には何ら言及していない場合には、右反訴請求については、不服申立の範囲外であるとして控訴審の判断が示されなくても違法でない。
事件番号: 昭和37(オ)291 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
甲乙間の農地訴有権移転の許可申請書に添付されている農地売買契約書表示の契約年月日において甲乙間に直接売買がなされた事実はなく、真実は、前示年月日以前に甲丙間に売買契約が成立していたところ、丙の右契約にもとづく権利を乙が譲り受け、甲乙間に当該農地の所有権移転がなされるに至つた場合にあつては、申請書添付書類に右のような真実…
事件番号: 昭和38(オ)1272 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。