宗教法人法二四条但書の規定は、善意であつても重大な過失のある相手方または第三者までも保護する趣旨のものではないと解すべきである。
宗教法人法二四条但書と重大な過失のある相手方または第三者
宗教法人法24条
判旨
宗教法人法24条但書の「善意」には重過失がないことが含まれ、宗教法人が重要な財産を処分する際の手続を欠いたことにつき重過失のある相手方には無効を対抗できる。
問題の所在(論点)
宗教法人が境内建物等の処分にあたって公告等の手続(宗教法人法23条)を欠いた場合、その処分は原則として無効となるが(同法24条本文)、同条但書にいう「善意の相手方」に重大な過失のある者が含まれるか。
規範
宗教法人法24条本文に規定する物件は、宗教法人の存続の基礎となる重要な財産であり、特殊な利害関係人を多数擁する宗教法人の特性に鑑み、同条但書の「善意」の相手方または第三者に、善意であっても重大な過失のある者は含まれないと解すべきである。
重要事実
宗教法人B寺の代表役員Dは、法23条および規則所定の手続を履践せずに、調停を通じて境内地を上告人に譲渡した。この際、B寺側には弁護士である代理人がついていたが、譲受人である上告人の代理人Eには、本件譲渡手続の不備(手続未履践)に気付かなかったことにつき重大な過失が認められる事情があった。
事件番号: 昭和35(オ)948 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
一 法律行為の効力は、その行為当時施行されていた法令によつて定められるのであり、その後に法令の改廃が行われても、過去の法律行為の効力に影響を及ぼさない。 二 所属宗派の主管者の承認を欠くため無効であつた寺の不動産処分行為は、宗教法人の施行によつて有効とはならない。
あてはめ
本件境内地の譲渡は、法所定の手続を欠くため原則として無効である。上告人は無効の対抗を受けない「善意」の相手方であると主張するが、上告人の代理人Eには重過失が認められる。本規定の趣旨が、宗教法人の存続基盤となる重要財産の保護と利害関係人の多さに鑑みたものである以上、重過失ある者を保護する必要はない。したがって、相手方代理人に重過失がある本件では、上告人は同条但書により保護されない。
結論
上告人は重大な過失があるため、宗教法人法24条但書の「善意の相手方」には当たらず、被上告人は境内地譲渡の無効を上告人に対抗することができる。
実務上の射程
宗教法人法24条但書の解釈を示すリーディングケースである。民法94条2項等の「善意」の解釈とは異なり、宗教法人の公益性と財産基盤の重要性に鑑み、「無過失(少なくとも重過失がないこと)」まで要求する趣旨。司法試験においては、法人の代表権制限や公示なき手続違反の効力を論じる際の、類推適用の可否や過失の有無を検討するメルクマールとして活用できる。
事件番号: 昭和49(オ)1202 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
土地の買主が、所有権移転登記をうけなかつたが申請手続の過誤により隣地につき所有権移転登記がされたためであり、土地の引渡はうけその使用をつづけた等判示の事実関係のもとにおいては、買受代金の支払について所有権移転登記手続との同時履行を主張することは信義則上許されない。
事件番号: 昭和39(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和44年1月28日 / 結論: 棄却
一、土地改良法(昭和三九年法律第九四号による改正前のもの)五一条による一時利用地の指定は、その指定地につき存続期間の法定された一時的な使用収益を許容するものにすぎず、これを将来そのまま換地とするために行なう処分ではない。 二、土地改良区の土地改良事業の施行にあたり、一時利用地の指定を受けながらこれに対応する換地を交付さ…
事件番号: 昭和42(オ)576 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 棄却
一、宗教法人が、宗教法人法第二四条本文に掲げる財産を処分するに当たつてした同法第二三条の公告が、その時期、期間などの点において、同条および右宗教法人の規則の定と相違する場合に、当該行為の効力を判断するに当たつては、公告によつて行為の要旨を信者その他の利害関係人に周知させ、不当な処分を防止しようとする同法の趣旨が維持され…