創立総会において決議することができるいわゆる変態設立事項の変更は、その縮小または削除に限られ、あらたに変態設立事項に関する定めを追加し、または既存の規定を拡張することは許されない。
創立総会による変態設立事項の変更
商法168条1項,商法185条1項,商法187条1項
判旨
変態設立事項が原始定款に記載されていない場合、創立総会においてこれを目的に追加・拡張する定款変更を行うことはできない。また、設立中の会社の代表機関が会社成立を条件として営業用財産を買い受ける行為は財産引受に該当し、原始定款に記載がなければ会社に対して効力を生じない。
問題の所在(論点)
原始定款に記載のない変態設立事項(財産引受等)を、創立総会の決議によって新たに追加・変更することができるか。また、設立中の会社が行う営業用財産の買入れが財産引受に該当するか。
規範
変態設立事項(現物出資や財産引受等)は、発起人の濫用を防ぎ、会社の財産的基礎を確保して債権者や他の株主を保護するため、原始定款の相対的記載事項とされ、検査役の調査等の厳重な規制に服する。創立総会における変更権(旧商法185条1項、現行会社法96条参照)は、不当な事項を縮小・削除するための監督是正権限であり、定款に記載のない変態設立事項を新たに追加・拡張することは許されない。また、会社設立を条件として営業用財産を買い受ける契約は、実質的に財産引受(現行会社法28条2号)に該当する。
重要事実
上告会社(被告)の設立過程において、発起人総代と被上告人(原告)らとの間で、本件土地建物を提供し、その対価として一部は株式、一部は金銭を交付する旨の合意(財産引受等)がなされた。しかし、この事項は原始定款に記載されていなかった。その後、創立総会において当該合意を承認する決議がなされたが、会社設立後に上告会社は本件土地建物の所有権取得を主張し、その有効性が争われた。
事件番号: 昭和36(オ)258 / 裁判年月日: 昭和39年12月22日 / 結論: 破棄差戻
貸金債権を担保する不動産の売買予約完結権につき右債務を弁済したときは予約完結権のための所有権移転請求権保全の仮登記を抹消する旨の調停が成立した場合において、調停条項に右予約完結権の行使の効果について明記されておらずその他判示事情のもとでは、右調停により、前記予約完結権の行使の効果が当初の代物弁済的性質から、いわゆる清算…
あてはめ
本件土地建物の買入れは、設立中の会社を代表すべき機関が会社成立を条件として営業用店舗・敷地として買い受けたものであり、性質上「財産引受」にあたる。この事項は原始定款に記載がない。創立総会の定款変更権は、既存の変態設立事項を監督し縮小・削除する場面に限定されるべきであり、原始定款にない事項を新たに追加することは法の厳重な規制(会社資本の充実と債権者保護)を潜脱する結果となるため、たとえ満場一致の決議であっても許されない。
結論
本件土地建物の譲渡に関する合意は、原始定款の記載を欠き、かつ創立総会による追加的変更も認められないため、会社に対して効力を生じない。したがって、上告会社は本件土地建物の所有権を取得しない。
実務上の射程
会社法28条(変態設立事項)の厳格な公示・調査手続の重要性を示す射程の長い判例である。答案上は、原始定款に記載のない「財産引受」の効力を否定する根拠として活用する。また、募集設立における創立総会の権限限界についても、資本充実の原則を理由に制限的に解する論拠となる。
事件番号: 昭和38(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
債務額一三七万円の約四・五倍にあたる六〇九万五千円余の価額を有する土地および建物を目的とする代物弁済契約であつても、相手方の窮迫、軽卒に乗じ不当な利益を獲得する目的でしたものと認められない以上、右代物弁済契約は、民法第九〇条により無効であるとはいえない。
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。
事件番号: 平成8(オ)718 / 裁判年月日: 平成11年11月25日 / 結論: 破棄自判
建築請負人からの注文者に対する請負契約に係る建物の所有権保存登記抹消登記手続請求訴訟の提起は、右請負代金債権の消滅時効中断事由である裁判上の請求に準ずるものとはいえず、右訴訟の係属中右請負代金について催告が継続していたということもできない。
事件番号: 昭和26(オ)510 / 裁判年月日: 昭和28年12月3日 / 結論: 棄却
一 定款に記載のない財産引受は、たとえ会社成立後株主総会が特別決議をもつてこれを承認しても、有効にはならない。 二 財産引受が無効である場合には、会社側だけでなく、譲渡人もその無効を主張することができる。