株式会社は、法令がとくに取締役会の決議事項であると定めたものを除いて、取締役会に属する業務執行に関する意思決定の権限を、定款をもつて、代表取締役に委任することができる。
株式会社の業務執行に関する意思決定権限の代表取締役に対する委任
商法260条,商法261条
判旨
代表取締役が取締役会の決議を経ずにした対外的取引は原則として有効であり、相手方が当該内部的意思決定の瑕疵につき悪意または有過失の場合に限り、会社はその無効を主張できる。
問題の所在(論点)
代表取締役が取締役会決議等の内部的な意思決定を経ずに行った対外的取引行為の効力、およびその無効を主張するための要件が問題となる。
規範
代表取締役がした対外的な個々的取引行為は、内部的に適法な意思決定(取締役会決議等)を欠く場合であっても、原則として有効である。ただし、行為の相手方が内部的意思決定における瑕疵の存在を知り、または知り得べかりしとき(悪意・有過失)に限って、会社側は当該瑕疵を理由に、行為の無効を主張することが許される。
重要事実
D株式会社の定款には、業務の方針その他重要事項は取締役会で定める旨の規定があった。同社の代表取締役Eは、取締役会の決議に基づかずに本件建物の売買につき追認行為を行った。これに対し、上告人は当該追認が取締役会決議を欠くため無効であると主張して、被上告人に対抗しようとした事案である。
事件番号: 昭和36(オ)1378 / 裁判年月日: 昭和40年9月22日 / 結論: 棄却
一 株式会社の代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、相手方において右決議を経ていないことを知りまたは知ることができたときでないかぎり、有効である。 二 中小企業等協同組合は、法令がとくに理事会の決議事項であると定めたものを除いて、理事会に属…
あてはめ
まず、代表取締役が行った追認行為が「重要事項」に該当し、取締役会決議を要するかを検討すべきである。本件定款の規定は、法令上取締役会決議が必須な事項を除き代表取締役に権限を委任する趣旨を含むと解されるため、個別の取引が「重要事項」にあたると認められない限り、内部的意思決定の欠缺(瑕疵)自体が認められない。その上で、仮に瑕疵があるとしても、相手方がその瑕疵について悪意または有過失であることを、無効を主張する側(上告人)が主張・立証する必要があるが、本件では追認が重要事項に該当することすら明らかにされていない。
結論
代表取締役による追認行為は、それが取締役会決議を要する重要事項に該当し、かつ相手方がその欠缺につき悪意・有過失でない限り、有効である。本件では重要事項該当性が認められないため、上告人の無効主張は認められない。
実務上の射程
会社法362条4項各号の「重要な財産の処分」等の論点において、取締役会決議を欠く取引の効力を論じる際のリーディングケースとなる。判旨は民法93条1項但書の類推適用を示唆する枠組み(心裡留保類似の構成)をとっており、会社法下でも「原則有効・相手方悪意有過失で無効」という規範として定着している。
事件番号: 昭和42(オ)1317 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 棄却
財産引受が定款に記載がなく無効である場合には、会社側だけでなく、譲渡人もその無効を主張することができる。