一、特定の事項について共同代表取締役の意思が合致した場合において、代表取締役のある者が他の代表取締役に右意思を外部に表示することにつき代表権の行使を委任することは、共同代表の定めに反しない。 二、会社に甲乙、丙の代表取締役があり、共同代表の定めがあるにもかかわらず、甲、乙のみによつて会社所有の物件が売却された場合において、会社が甲の財産の保全、運営のために設立されたものであり、乙、丙はいずれも甲と内縁関係にあつて、会社の業務は専ら甲によつて運営され、実質的には共同代表が行われておらず、右売却にあたつて甲が丙の合意もあると買主を信じさせるような言動をし、かつ、契約締結後約五年の間会社において右契約が無効であるとの主張をしなかつた等判示のような事情があるときは、会社が右売買契約を共同代表の定めに違背し無効であると主張することは、信義則に反し、許されない。
一、共同代表の定めと特定の事項について共同代表取締役の意見が合致した場合における代表権行使の委任 二、契約が共同代表の定めに違背し無効であると主張することが信義則に反し許されないとされた事例
商法261条2項,民訴法1条2項
判旨
共同代表の定めがある場合でも、代表取締役全員の意思が合致し、その表示のみを特定の代表取締役に委任したときは、当該委任に基づく代表行為は有効である。また、共同代表の定めに反する代表行為であっても、会社の業務実態や相手方の信頼、その後の経過に照らし、無効主張が信義則に反する場合は許されない。
問題の所在(論点)
1.共同代表の定めがある場合、代表取締役が他の代表取締役に代表権の行使を委任してなされた代表行為の効力。 2.共同代表の定めに違反した代表行為につき、会社がその無効を主張することが信義則(民法1条2項)により制限されるか。
規範
共同代表取締役は原則として共同して代表権を行使すべきであり、包括的な委任は許されない。しかし、特定の事項について全員の意思が合致し、その意思表示のみを特定の代表取締役に委任した場合には、会社の利益を害するおそれがないため、当該代表行為は有効である。また、形式的に共同代表に反する場合であっても、会社の運営実態や相手方の正当な信頼、契約後の長期間の放置などの事情に鑑み、会社側が無効を主張することが信義則に反し許されない場合がある。
重要事実
A1社の代表取締役3名(D、E、F)には共同代表の定めがあった。本件売買契約に際し、全員の意思が合致し、FがDに意思表示を委任したため、DとEが契約を締結した。一方、A2社の代表取締役3名(D、E、G)も共同代表であったが、Gは契約に関与せず委任もなかった。しかし、A2社はDが主宰する個人会社的性格が強く、GはDの内縁の妻で運営に関与しておらず、共同代表の定めは有名無実であった。相手方BはDの説明を信じ、5年間無効主張もなされなかった。
あてはめ
A1社については、特定の売買契約締結につき代表取締役全員の意思が合致しており、FからDへの委任は「意思表示の代行」に留まるため、共同代表の定めに反せず有効である。A2社については、Gの関与がないため形式的には無効であるが、(1)会社が実質的に主宰者Dにより運営され、共同代表の定めが有名無実であったこと、(2)相手方がGの同意があると信じたことにやむを得ない事情があること、(3)5年間も無効を主張せず放置した後に主張し始めたこと、に照らせば、無効主張は信義則に反する。
結論
A1社の契約は共同代表の定めに反せず有効である。A2社の契約は形式的に定めに反するが、会社側による無効主張は信義則上許されない。したがって、いずれの契約も無効とはならない。
実務上の射程
共同代表違反の効力を争う際、まずは「意思決定の合致」の有無を検討し、それが認められれば個別委任の有効性により契約を維持できる。意思決定に欠落がある場合でも、会社の実態(一人会社的性格)や表見代理規定(会社法354条等)の類推適用の余地、さらには本判決のように信義則による無効主張の遮断という多角的な構成を検討すべきである。
事件番号: 昭和40(オ)49 / 裁判年月日: 昭和41年10月18日 / 結論: 棄却
代理人が自己の名を示さず本人の名においてなした行為も代理行為として有効である。
事件番号: 昭和43(オ)280 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: 破棄差戻
会社の代表取締役が他から不動産を買い受けた場合において、売主がその買主として信用のある個人を望み、各種会社、団体の役員をつとめ社会的信用のある右代表者個人をその最適任者と考え、売買契約においても右代表者個人の名義を使用したとしても、右会社が個人会社の実態を有し、その代金およびその後の維持費が会社の経理から支出され、右不…