一 株式会社の代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、相手方において右決議を経ていないことを知りまたは知ることができたときでないかぎり、有効である。 二 中小企業等協同組合は、法令がとくに理事会の決議事項であると定めたものを除いて、理事会に属する業務執行の意思決定の権限を、定款で、代表理事に委任することができる。
一 株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないでした対外的な個々的取引行為の効力。 二 中小企業等協同組合が代表理事に対し委任できる業務執行の意思決定の権限の範囲。
商法260条,商法261条,商法78条1項,民法93条,中小企業等協同組合法33条,中小企業等協同組合法36条の2,中小企業等協同組合法42条
判旨
取締役会設置会社において、取締役会の決議を欠く代表取締役の対外的な個々的取引行為は、原則として有効であるが、相手方が決議の欠如を知りまたは知り得た場合には無効となる。
問題の所在(論点)
取締役会の決議を要する重要な業務執行について、代表取締役がその決議を経ずにした対外的取引行為の効力が問題となる(旧商法260条、現行会社法362条4項等)。
規範
代表取締役は、株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(会社法349条4項参照)。したがって、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を、決議を経ずに代表取締役が行った場合、それは単なる内部的意思決定の欠缺にすぎないため、原則として有効である。ただし、取引の安全と会社の利益保護の調和の観点から、民法93条1項但書の類推適用により、相手方が右決議を経ていないことを知り、または知り得べきであったときに限って、当該取引行為は無効になると解するのが相当である。
重要事実
事件番号: 昭和36(オ)1378 / 裁判年月日: 昭和40年9月22日 / 結論: その他
商法第二四五条第一項第一号にいう「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」とは、一定の営業の目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要なる一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業…
上告会社(株式会社)の代表取締役である上原は、会社の「重要事項」に該当し取締役会の決議を要する物件の売却(本件物件の売却)を、取締役会の決議を経ることなく被上告組合との間で行った。上告会社は、取締役会決議を欠くことを理由に本件売買契約の無効を主張した。
あてはめ
本件において、代表取締役が本件物件を売却するには取締役会の決議を要したにもかかわらず、その決議を経ていなかった事実は認められる。しかし、買主である被上告組合が、右決議を経ていないことについて悪意であったこと、または過失によりこれを知らなかった(知り得べきであった)という事実は、全証拠に照らしても認められない。したがって、代表取締役の行為は、内部的意思決定を欠くに止まり、対外的な効力は否定されない。
結論
本件売買契約は有効である。相手方が決議の欠如について善意・無過失である限り、取締役会決議を欠く代表取締役の行為の効力は妨げられない。
実務上の射程
会社法362条4項各号の「重要な業務執行」に該当する行為を代表取締役が独断で行った場合の処理として、実務・答案作成上最も基本的な準拠枠組み(原則有効・心裡留保類推適用による例外無効)を提供するものである。なお、本判決は中小企業等協同組合の理事会の権限についても言及しているが、株式会社における取締役会決議欠缺の論点として引用されることが一般的である。
事件番号: 昭和44(オ)477 / 裁判年月日: 昭和44年9月2日 / 結論: 棄却
株式会社は、法令がとくに取締役会の決議事項であると定めたものを除いて、取締役会に属する業務執行に関する意思決定の権限を、定款をもつて、代表取締役に委任することができる。
事件番号: 昭和39(オ)848 / 裁判年月日: 昭和40年10月5日 / 結論: 棄却
供託書の記載を司法書士に依頼するに際し、法律知識のとぼしい普通の人間は、法律専門職である司法書士に対し供託原因の記載内容まで指示することは通常期待できない、という経験則はない。
事件番号: 昭和35(オ)461 / 裁判年月日: 昭和36年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】登記申請行為は、国家機関たる登記所に対してなされる公法上の行為であって、私法上の意思表示ではないため、民法上の表見代理規定等の直接の適用はない。 第1 事案の概要:上告人らが、本件建物の所有権移転等に関する登記申請行為について、それが私法上の意思表示に該当するか、あるいは代理権の有無等が争点となる…