民法第七一七条の規定に基づいて、いまだ損害が発生しないのにかかわらず、将来損害を生ずるおそれがあることを理由として、その予防のため右工作物の修復を求め、さらにその修復を終えるまでその使用の差止めを求めることはできない。
民法第七一七条の規定に基づく妨害予防請求の可否
民法717条
判旨
民法717条は工作物の設置・保存の瑕疵により現実に損害が発生した場合の損害賠償責任を定めたものであり、将来の損害発生の防止を目的とする工作物の修復や使用差止を求める根拠とはならない。
問題の所在(論点)
工作物の設置・保存の瑕疵により将来損害を被るおそれがある者が、民法717条を直接の根拠として、占有者に対し工作物の修復および使用差止を請求することができるか。
規範
民法717条に基づき、工作物の占有者・所有者に対して請求できるのは、既に発生した「損害の賠償」に限定される。将来の損害発生の蓋然性を理由とする工作物の修復請求、および修復完了までの使用差止請求は、同条の規定に基づいて行うことはできない。
重要事実
上告人は、被上告人らが占有する溜池に設置または保存の瑕疵があるとして、将来損害が生ずるおそれがあることを理由に、民法717条に基づき溜池の修復工事の施行、および当該工事が完了するまでの溜池の使用禁止(差止)を求めて訴えを提起した。
あてはめ
民法717条は「他人に損害を加えたとき」に「損害を賠償する」責任を規定している。本件において、上告人は将来の損害予防を目的として修復と使用禁止を求めているが、これは条文が予定する既発生の損害に対する金銭賠償等の補填とは性質を異にする。同条の文言上、将来の損害予防措置までを占有者に義務付ける根拠とは解されないため、本件請求は同条の要件を欠く。
結論
民法717条に基づく修復および使用差止の請求は認められない。上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
工作物の瑕疵による差止請求を行う場合には、民法717条ではなく、物権的請求権(妨害予防請求権)や人格権に基づく差止請求、あるいは占有保持の訴え(民法198条)等を根拠とする必要がある。答案上は、請求の根拠条文を選択する際の消極的な規範として活用できる。
事件番号: 昭和23(オ)75 / 裁判年月日: 昭和25年12月1日 / 結論: 棄却
居住地域から流木することによつて取得した慣習上の河川使用権は、その地域の上流に及ばない。
事件番号: 昭和33(オ)510 / 裁判年月日: 昭和37年11月8日 / 結論: 棄却
三五〇〇ボルト以下の高圧架空送電線のゴム被覆が破損していたため感電事故が生じた場合、行政上の取締規定からは右電線にゴム被覆を用いることが必要でなく、また、終戦後の国内物資の欠乏からその電力会社管下の破損したゴム被覆高圧送電線を全部完全なものに取り替えることは極めて困難な状況にあつても、事故現場の電線の修補することが絶対…