居住地域から流木することによつて取得した慣習上の河川使用権は、その地域の上流に及ばない。
河川使用権の範囲
民法176条
判旨
河川使用権などの公物使用権に基づく妨害排除請求の可否は、侵害による損害の程度、事業の公共性、補償契約の有無等の諸事情を総合考慮し、受忍限度を超えるか否かによって決せられる。
問題の所在(論点)
河川使用権という慣習上の権利に基づき、電力事業による水流減少等の妨害を排除(流木路設置等の請求)することが認められるか。特に、事業の公共性や補償の存在が受忍限度の判断にどう影響するか。
規範
特定の権利(河川使用権等)を有する者であっても、その権利行使が社会全体の利益や他者の経済活動と衝突する場合、その侵害が「受忍限度」を超えるものでない限り、妨害排除や施設設置を求めることはできない。判断に際しては、①侵害される利益の性質・程度、②侵害行為(事業)の公共性・重要性、③代替措置や補償の有無を総合的に考慮する。
重要事実
b川の流域住民である上告人らは、流木による河川使用権を有していた。これに対し、電力会社である被上告人が上流にc堰堤を建設し、発電のために河水を利用した結果、流木に必要な水量が減少した。上告人らは、被上告人に対し、流木路の設置や放水を求めて提訴した。なお、村長らと会社との間には、河川使用権に関する補償契約が締結されていた。
あてはめ
まず、上告人らの権利は居住地域内に限定され、上流の堰堤自体への権利行使は及ばない。その上で、経済復興における電力事業の重要性(公共性)は極めて高く、放流を強制すれば事業に大きな障害を与える。他方、上告人らの損害は「死活に関わるほど甚大」とはいえず、既に補償契約が存している。これらの事情を総合すれば、本件の損害は社会通念上「忍受すべき」範囲内にあるといえる。
結論
上告人らの請求は認められない。河川使用権の侵害が受忍限度を超えない以上、堰堤への流木路設置や放水を求める権利は発生しない。
実務上の射程
物権的請求権や不法行為の成否において「受忍限度論」を適用する際の古典的リーディングケースである。特に、公利(電力事業)と私利(流木権)の調整において、補償の有無が受忍限度を判断する重要な一要素となることを示している。
事件番号: 平成30(受)533 / 裁判年月日: 令和元年7月18日 / 結論: 破棄自判
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事件番号: 昭和33(オ)977 / 裁判年月日: 昭和34年9月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同の権利に属する温泉利用(配湯)権について、その一部の持分権を有する者が他の権利者に対して自己の権利の確認を求める訴えは、必要的共同訴訟には当たらない。 第1 事案の概要:原告(被上告人)は、被告(上告人)および訴外人Dとの三者間において、共同の権利に属する温泉利用(配湯)を受ける権利を有してい…