判旨
刑事裁判において、前提となる水利権等の私法上の権利関係の存否を確認することは、刑事裁判権の範囲内であり、民事裁判の限界を干犯するものではない。刑事判決による権利関係の確認には民事訴訟における既判力がないため、司法権の役割分担に反しないからである。
問題の所在(論点)
刑事裁判において、犯罪構成要件の前提となる私法上の法律関係(権利の存否)を判断することが、民事裁判権との関係で刑事裁判権の限界を逸脱するか。
規範
刑事裁判所が犯罪の成否を判断する前提として、被告人の有する私法上の権利(水利権等)の存否を確認することは、刑事裁判権の行使として適法である。刑事判決の判断は、後に提起される民事訴訟において既判力を生じさせるものではないため、民事裁判の権限を侵食するものとはいえない。
重要事実
被告人が用水堀を自己の水田に利用する権利を有しているか否かが争点となる刑事事件において、原判決は被告人に当該権利がないことを事実として確認した。これに対し弁護人は、刑事裁判所が私法上の権利関係を確定することは民事裁判の限界を干犯し、刑事裁判権の範囲を逸脱するものであると主張して上告した。
あてはめ
刑事裁判所が、被告人が用水堀を利用する権利を有しないという事実を確認することは、当該被告人の行為が犯罪に該当するかを確定するために必要な付随的判断である。このような確認がなされたとしても、その判断の既判力は民事訴訟における当該水利権の主張にまで及ぶものではない。したがって、法的な権利関係の最終的な確定権は依然として民事裁判所に留保されており、刑事裁判権の行使が民事裁判の限界を侵すことにはならない。
結論
刑事裁判所が前提としての権利関係を確認することは適法であり、刑事裁判権の範囲を逸脱しない。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(あ)3844 / 裁判年月日: 昭和33年12月25日 / 結論: 破棄差戻
一 本件電源ストにおいて被告人らが排水門、制水門を開放して水力発電所の用水を放流した積極的な所為が、電源職場における被告人ら従業員の労務提供義務不履行行為にあたる理由を説示するところなく無罪とした原判決は、理由不備ないし重大な事実誤認の疑がある。 二 原判決が一面ピケツテイングは平和的説得ないし団結の示威を建前とすると…
先決問題として私法上の法律関係(所有権の帰属や水利権の存否等)が争われる刑事事件全般に適用される。民事訴訟との既判力の峻別を根拠としており、刑事手続における事実認定の自由度を担保する射程を持つ。
事件番号: 昭和24(オ)25 / 裁判年月日: 昭和25年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定および証拠の取捨選択は原審(事実審)の専権事項であり、経験則違背等の特段の事情がない限り、上告審がこれを覆すことはできない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した各事実について、経験則違背や審理不尽等の違法があると主張して上告を申し立てた。しかし、具体的な事案の内容や争点となった具…