「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(昭和三〇年条約第一号)第八条の規定は、一方の締約国の居住者または法人その他の団体の他方の締約国内に存する不動産その他同条所定の資産については、右資産の所在国が、これに別段の課税方法を設けているときでも、その納税者に純所得を基礎とした課税方法を選択することを許容する旨を定めたものと解するのが相当である。
「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」第八条の趣旨
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約8条
判旨
日米租税条約8条は、不動産等の収益につき、資産所在国の課税方法として純所得を基礎とする方式を選択できることを認めたにすぎず、課税権そのものに服するか否かの選択権を納税者に与えたものではない。
問題の所在(論点)
旧日米租税条約8条が定める不動産所得等に対する課税の特例は、納税者に対し、資産所在国(日本)による課税権そのものを受け入れるか否かの選択権を付与しているか。
規範
一方の締約国の居住者等が他方の締約国内に有する不動産等の資産から生じる収益について、当該資産の所在国が別段の課税方法を設けている場合であっても、納税者が純所得を基礎とした課税方法を選択することを許容する趣旨であると解すべきであり、当該収益について資産所在国の課税権自体を免れる選択肢を認めるものではない。
重要事実
アメリカ合衆国の居住者または法人である上告人が、日本国内に存する不動産等から生じた収益について、日米租税条約(昭和30年条約第1号)8条の規定に基づき、資産の所在国である日本の課税権に服するか否かを選択できると主張して争った事案である。
事件番号: 昭和41(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: 棄却
旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)第五条の二の規定は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得とし、それを右資産の他への移転の時期において課税の対象とするのを相当と認め、それが対価を伴わずに移転される場合にもいわゆる譲渡所得に準じて取り扱うべきものとしたのであつて、所得のないところに課税所得の存在を擬…
あてはめ
同条の規定は、不動産収益等について、所在国が独自の課税方法(例えば総額課税等)を定めている場合であっても、納税者が実質的な担税力に応じた「純所得を基礎とした課税」を希望すれば、それに応じることを締約国に義務付けたものと評価できる。しかし、これは課税の計算手法や形式の選択を認めたものにすぎず、主権国家の課税権そのものからの逸脱を納税者の意思に委ねる趣旨とは解されない。
結論
日米租税条約8条は課税権に服するか否かの選択を認めたものではない。したがって、日本国内の不動産収益に対する日本の課税権を否定する上告人の主張は認められない。
実務上の射程
条約による課税の優遇措置や計算方法の特例が認められている場合であっても、それが「課税の有無(課税権の存否)」そのものを納税者が自由に選択できる趣旨であると解釈することは困難であるという、条約解釈の限界を示している。
事件番号: 昭和39(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和40年9月24日 / 結論: 棄却
第三者の債務の担保に供された抵当不動産が競売に付せられ競落代金が納付された場合には、求償権が事実上取立不能であつても、譲渡所得は成立する。
事件番号: 昭和40(行ツ)87 / 裁判年月日: 昭和42年5月19日 / 結論: 棄却
租税特別措置法(昭和三八年法律第六五号による改正前のもの)第三五条にいう譲渡に係る「居住の用に供する家屋の敷地に供される土地」とは、譲渡の当時現実に居住用家屋の敷地に供されている土地だけでなく、所有者が居住用家屋の敷地に供する意図のもとに所有している土地をも含むが、所有者の右の意図は、近い将来において実現されることが客…
事件番号: 昭和38(オ)499 / 裁判年月日: 昭和39年10月22日 / 結論: 棄却
所得税確定申告書の記載内容についての錯誤の主張は、その錯誤が客観的に明白かつ重大であつて、所得税法の定めた過誤是正以外の方法による是正を許さないとすれば納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ、許されないものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
破産宣告後の原因に基づく破産者の所得に課せられた所得税は、破産法第四七条第二号但書にいう「破産財団ニ関シテ生シタル」請求権にあたらない。