「被疑者氏名、D外三名」、「罪名、賭博」、「検索すべき場所、甲府市a町b番地麻雀荘EことA方居宅(含営業所)及附属建物」、「差押えるべき物、本件に関係ありと思料される帳簿、メモ、書類等」と記載された捜索差押令状によつて麻雀牌および計算棒を差し押えても、国家賠償法第一条第一項にいう違法な行為にあたらない。
差押令状による物件の差押えが違法でないとされた事例
国家賠償法1条1項,刑訴法219条,憲法35条
判旨
捜索差押令状における「差押えるべき物」の記載が、罪名や捜索場所と相まって対象を特定できる程度のものであれば、麻雀牌等が例示列挙に明記されていなくとも適法である。
問題の所在(論点)
捜索差押令状における「差押えるべき物」の記載が「帳簿、メモ、書類等」とされている場合において、記載のない麻雀牌等の差し押さえが憲法35条の「押収する物の明示」の要求に反しないか。また、被疑者の氏名が「D外三名」とされていることが特定を欠かないか。
規範
憲法35条が要求する「押収する物の明示」の程度は、令状全体(被疑者の氏名、罪名、捜索すべき場所等)の記載内容を総合し、具体的事実関係に照らして、執行官が差し押さえるべき物の範囲を理解し、捜査機関の恣意的な押収を防止できる程度に特定されていれば足りる。また、捜索と押収について一通の令状に記載(捜索差押許可状)することも許容される。
重要事実
賭博罪の被疑事件において、裁判官が「被疑者氏名、D外三名」「罪名、賭博」「捜索すべき場所、麻雀荘EことA方居宅(含営業所)及附属建物」「差押えるべき物、本件に関係ありと思料される帳簿、メモ、書類等」と記載された一通の捜索差押令状を発付した。これに基づき捜査機関が捜索を実施し、令状の「差押えるべき物」の項目に明示されていなかった「麻雀牌」および「計算棒」を差し押さえた。
事件番号: 昭和32(オ)573 / 裁判年月日: 昭和35年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法35条2項は、捜索と押収について各別の許可が記載されていれば足り、これらを一通の令状に記載することを妨げない。また、差押えるべき物の表示が「被疑者七名の不法出国に関する文書物件の一切」と記載されている令状は、一般令状には当たらず適法である。 第1 事案の概要:上告会社に対し、被疑者7名の不法出…
あてはめ
本件令状には、罪名が「賭博」、捜索場所が「麻雀荘」と明記されている。賭博罪の立証において麻雀牌や計算棒は中核的な証拠物(本件に関係ありと思料される物)である。令状の記載を具体的事実関係に照らして検討すれば、例示された「帳簿、メモ、書類等」に含まれない麻雀牌等であっても、令状にいう「差押えるべき物」に包含されると解するのが正当である。また、被疑者氏名の「D外三名」との記載も、事案の性質上、特定を欠くものとはいえない。
結論
本件差押えは憲法35条に違反せず適法である。したがって、これに基づく有罪判決は正当である。
実務上の射程
概括的な記載(〜等)の有効性を肯定した判例であり、令状の特定は個別列挙の有無だけでなく、他の記載事項(罪名・場所)との相関関係で判断される。答案上、物権的証拠の特定が争点となる場合に、令状の流用防止と執行の便宜のバランスを説く際の根拠となる。
事件番号: 平成4(オ)2148 / 裁判年月日: 平成9年3月28日 / 結論: 棄却
公職選挙法所定の詐偽投票罪の捜査のため、市議会議員選挙における特定の候補者甲の氏名を記載した投票済み投票用紙全部の差押えがされ、右用紙から検出された指紋と警察保管の指紋との照合がされたが、右選挙の選挙人で投票した甲及び乙らは詐偽投票罪の被疑者とされておらず、右捜査により甲及び乙らの投票内容が外部に知られたとの事実はうか…