恐喝被疑事件で発付された捜索差押許可状に基づき、事件に関係のある「暴力団を標章する状、バツチ、メモ等」の目的物にあたるとして、暴力団員らによる常習的な賭博場開帳の模様を記録したメモを差し押えたことは、暴力団に関連のある被疑者らによつてその事実を背景として行われた事件であること、右メモにより被疑者と暴力団との関連を知りうること、暴力団の組織内容・性格を知りうることなどの事情のもとにおいては、これを適法というべきである。
差押物が捜索差押許可状の目的に含まれるとされた事例
憲法35条1項,刑訴法218条1項,刑訴法219条1項
判旨
捜索差押許可状に明示された「暴力団を標章するメモ等」に、別罪の直接証拠となり得る物が含まれていても、それが本件被疑事実の証拠としても必要かつ関連性を有する場合には、差押えは適法である。専ら別罪の証拠に利用する目的でない限り、本件に関係のある物としての差押えを否定すべきではない。
問題の所在(論点)
令状に「本件に関係ある……メモ等」と記載されている場合において、別罪(賭博罪)の直接証拠となる性質を持つ物件を差し押さえることが、令状主義(刑訴法219条1項、憲法35条)に反し違法とならないか。
規範
1. 憲法35条及び刑訴法219条1項の令状主義の趣旨に照らし、令状に明示されていない物の差押えは禁止される。 2. 捜査機関が「専ら別罪の証拠に利用する目的」で差押許可状に明示された物を差し押さえることは、令状主義の観点から禁止される。 3. もっとも、差し押さえられた物が本件被疑事実の組織的背景や犯人の所属関係等を解明するために必要な証拠(本件に関係のある物)と言える場合には、たとえそれが同時に別罪の直接証拠となる性質を有していても、同項の明示の範囲内に含まれると解するのが相当である。
重要事実
捜査機関は、暴力団組員らによる恐喝被疑事件につき、差し押さえるべき物を「本件に関係ある、暴力団を標章する状、バッチ、メモ等」とする許可状を得て、暴力団事務所を捜索した。その際、賭博の開張日や収支等が詳細に記録されたメモ196枚を差し押さえた。このメモは、本件恐喝事件の被疑者と暴力団との関係や組織の性格を示す資料であったが、後に別罪である賭博罪等の立証のために証拠として使用された。原審は、当該メモは一見して賭博特有のメモであり恐喝事件との関連性が乏しいとして、違法収集証拠排除法則により無罪を言い渡した。
あてはめ
本件メモには、暴力団組員らによる常習的な賭博の模様が記録されており、これにより被疑者と組の関係、組織内容、暴力団的性格を知ることができる。恐喝事件が暴力団の背景をもって行われたものである以上、これらの事実は本件の証拠として必要な関連性を有する。したがって、当該メモは許可状記載の「暴力団を標章するメモ等」に該当する。また、腕章や名簿等と共に差し押さえられている状況から、捜査機関が「専ら別罪の証拠に利用する目的」で差し押さえたとみるべき証跡も存在しない。よって、本件差押えに違法はない。
結論
本件差押えは適法であり、当該メモ及びそれに基づく供述調書の証拠能力を認めた第一審の判決は正当である。
実務上の射程
一般的に「別件差押え」として議論される場面での主要判例である。令状記載の物件と被疑事実との関連性が肯定される限り、副次的に別罪の証拠となる物であっても差し押さえ可能とする判断枠組みを示す。答案上は、物の属性が令状記載の文言に形式的に含まれるかだけでなく、被疑事実との実質的関連性(組織性や動機の立証等)の有無を検討する際に用いる。
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