一 捜索、押収令状の捜索の場所の表示中、捜索押収を受ける者の氏名に誤記があつても、これに基いてした捜索、押収は違法にはならない。 二 捜索と押収の許可は、一通の令状に記載することができる。
一 捜索押収令状の表示の誤記と捜索押収の効力 二 捜索押収の許可を一通の令状によることは適法か
憲法35条,刑訴応急措置法7条2項
判旨
令状に記載された被疑者の氏名に明らかな誤記がある場合であっても、場所等の記載から捜索すべき対象を特定できるときは、当該令状に基づく強制処分は適法である。また、捜索と押収の各別の許可が一通の令状に記載されることも、憲法35条2項の趣旨に反しない。
問題の所在(論点)
令状に記載された被疑者の氏名が誤っていた場合に、令状の特定性を欠き、当該令状に基づく捜索押収が憲法35条に違反し違法となるか。また、捜索と押収を一通の令状で行うことが許されるか。
規範
1. 憲法35条が要求する令状の「特定」とは、司法官による事前の審査を経て、執行官の恣意的判断を排除できる程度に特定されていることを要するが、記載の一部に明白な誤記があっても、他の記載事項等から客観的にその対象を特定し得る場合には、令状の有効性は失われない。2. 憲法35条2項は捜索と押収に各別の許可を求めているが、これは一通の令状に併記することを妨げるものではない。
重要事実
酒税法違反被告事件において、裁判官が発した捜索押収状には、被疑者氏名が「C」と記載され、捜索すべき場所として「安芸郡a町C方土蔵」と指定されていた。しかし、実際には当該地区に「C」なる人物は存在せず、同所における醸造業者は「D」であった。捜査機関は、この「D」方の土蔵を現実に捜索し、物件を押収した。
あてはめ
1. 本件令状の被疑者欄には「C」とあるが、当該地区の醸造業者は「D」のみであり、他には「C」なる者は存在しない。そのため、令状の「C」という記載は明らかに「D」の誤記であると認められる。したがって、捜索すべき場所は客観的に「D方土蔵」と特定されており、現実に捜索された場所と合致するため、特定性を欠くものではない。2. 令状が「捜索押収状」という名称で捜索と押収を一通の書面に記載していても、それぞれの許可が各別に記載されている以上、憲法の趣旨に適合する。
結論
本件令状による捜索押収は適法である。したがって、原判決に憲法解釈の誤りはない。
実務上の射程
令状の記載事項(氏名・場所等)に多少の誤記があっても、誤記であることが客観的に明白であり、他の記載から対象を特定できる場合には、令状の効力は否定されない。実務上、令状の有効性を争う際に、特定性の欠如による違法収集証拠排除法則の主張を検討する場面で参照されるべき判例である。
事件番号: 昭和26(れ)2124 / 裁判年月日: 昭和27年2月21日 / 結論: 棄却
本件捜索、押収令状の捜索押収の場所の表示が弘前市a町A方となつていることは所論のとおりであるが、記録三二五丁の報告書に被告人本人の立ち寄る所として弘前市大字a町実母A当五十六歳方なる旨の記載があるとの原審証人B、同Cの各供述記載とによれば、前記令状の表示は、同市同町C方の名違いであつて、結局氏名の誤記であることが認めら…
事件番号: 昭和26(あ)2185 / 裁判年月日: 昭和28年3月13日 / 結論: 棄却
一通の許可状でもつて臨検、捜索および差押について各個の許可がなされた場合、差押の許可に関する瑕疵は臨検、捜索の許可の効力に何らの影響もおよぼさない。