一 所論のように各証人個別に宣誓書を朗読せしめたか否かのごときは公判調書の記載事項でもないし、また、これが記載を欠くからといつてその手続が行われなかつたとはいえない。そして、原審公判調書に「証人に別紙宣誓書により宣誓させた」との記載があり且つ所論の証人が各別に署名押印した宣誓書が現に記録中に存在しているのであるから、所論の証人が各別に宣誓をしたことは明白である。 二 起訴状記載の被害者の姓が誤記であり且つ起訴状に被害場所の番地を記入せず又はその被害場所居住主の氏名の記載等が間違つていても、公訴事実若しくは訴因に変更を来すものではない。
一 公判調書中の「証人に別紙宣誓書により宣誓させた」との記載と証人の誓宣が各別に行われたことの有無 二 起訴状に被害場所の番地の未記入並びに被害者の姓の記載に誤記ある場合と公訴事実の同一性
刑訴法48条,刑訴法154条,刑訴法256条,刑訴規則44条
判旨
起訴状に記載された被害者の姓の誤記や被害場所の番地欠落等の不備があっても、直ちに公訴事実や訴因の変更を来すものではなく、訴訟手続上の違法とはならない。
問題の所在(論点)
起訴状における被害者の氏名や犯行場所の記載に誤記または不足がある場合、訴因の特定に欠けるとして訴訟手続の違法を構成するか。
規範
公訴事実の特定は、他の事実と識別できる程度になされていれば足りる。起訴状の記載内容(被害者の氏名、犯行場所の表示等)に一部誤記や不足があっても、それが直ちに公訴事実の同一性や訴因の性質に影響を及ぼすものではない。
重要事実
被告人が起訴された際、起訴状において、(1)被害者の姓が誤記されていた、(2)被害場所の番地が記入されていなかった、(3)被害場所の居住主の氏名の記載が間違っていた、という不備があった。これらについて弁護人は訴訟手続の違反を主張して上告した。
あてはめ
本件における被害者の姓の誤記、番地の不記載、居住主の氏名の誤記は、いずれも公訴事実を特定する上での細部に関する付随的事項にすぎない。これらの不備があっても、審判の対象となる具体的犯罪事実は他の事実から識別可能であり、公訴事実そのものや訴因に変更を来すものではない。したがって、被告人の防御権を実質的に害するような訴訟手続の違反は認められない。
結論
起訴状の記載に一部誤記や不足があっても、公訴事実や訴因に変更を来すものではないから、原判決に訴訟手続の違反は認められない。
実務上の射程
訴因の特定(刑訴法256条3項)に関する初期の判例である。犯行の日時・場所・方法等の特定が不十分であっても、他の事実と識別可能であれば有効とされる「識別説」の立場を前提とした実務運用を裏付けるものとして活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1244 / 裁判年月日: 昭和28年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に検察官が不出席である旨の記載があっても、特定の検察官の氏名が併記されている等の事情から誤記であることが明白な場合には、公判手続の適法性は否定されない。また、起訴状の事件名が公訴事実の内容と合致していれば、記載上の不備による違法は存在しない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罪で起訴された…