本件捜索、押収令状の捜索押収の場所の表示が弘前市a町A方となつていることは所論のとおりであるが、記録三二五丁の報告書に被告人本人の立ち寄る所として弘前市大字a町実母A当五十六歳方なる旨の記載があるとの原審証人B、同Cの各供述記載とによれば、前記令状の表示は、同市同町C方の名違いであつて、結局氏名の誤記であることが認められるから、原判決が前記のごとく単に表示が誤つたに過ぎないと判断したのは正当であるといわなければならない。従つて原判決が仮りに右ゴム靴の押収手続に右のごとき違法があるとしても、該押収物について裁判所が適法に証拠調をした以上はこれを証拠とすることのできることは当然であると解する旨説明したことは結局是認できるのである。
捜索押収令状の表示の誤記と押収物の証拠力
刑訴応急措置法7条
判旨
捜索押収令状における場所の表示に氏名の誤記があっても、それが単なる表示上の誤りであるに過ぎない場合には、当該令状に基づく押収手続は適法である。また、仮に押収手続に違法があったとしても、裁判所が適法に証拠調べを行った以上は、当該押収物を証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
捜索押収令状に記載された場所の氏名が誤っていた場合、当該令状に基づく押収手続は憲法35条等に違反し違法となるか。また、手続に違法がある証拠について、適法に証拠調べが行われた場合に証拠能力が認められるか。
規範
令状に記載された捜索場所の表示に誤りがある場合であっても、それが客観的状況や報告書等の資料に照らして単なる氏名の誤記(表示の誤り)と認められる限度においては、令状の有効性に影響しない。また、証拠物の証拠能力に関し、手続に違法があったとしても、裁判所が適法な証拠調べの手続を経た以上は、これを証拠として採用することが許容される。
重要事実
本件における捜索押収令状には、捜索場所として「弘前市a町A方」と記載されていたが、実際には被告人の実母である「C」の居宅であった。記録上の報告書や証人の供述によれば、当該場所は被告人が立ち寄る所として把握されており、令状の「A」という表示は「C」の名違いであった。この令状に基づきゴム靴が押収され、一審および二審において証拠として取り調べられた。
あてはめ
本件令状の場所表示について、報告書等の記載によれば実母Cの居宅を指していることは明らかであり、Aという記載は単なる名違い、すなわち氏名の誤記に過ぎない。したがって、令状の表示が実態と異なることのみをもって直ちに無効な令状による違法な押収ということはできない。さらに、仮に押収手続に何らかの違法があったと仮定しても、裁判所が法廷において適法な証拠調べ手続を完了している以上、当該ゴム靴を事実認定の証拠に供することは許されると解される。
結論
本件押収手続に憲法違反の違法はなく、また適法に証拠調べがなされた以上、当該押収物を証拠と認めた原判決に違法はない。
実務上の射程
令状の特定性に関する「誤記」の許容範囲を示す判例。なお、後半の「適法に証拠調べをすれば違法な証拠も使用できる」とする法理は、その後の昭和53年最判(違法収集証拠排除法則)によって修正されており、現在は「重大な違法」がある場合には証拠能力が否定される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和27(あ)6298 / 裁判年月日: 昭和29年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に記載された被害者の氏名が誤記であることが記録上明白である場合には、審判の請求を受けない事件について判決した違法(不告不理の原則違反)は認められない。 第1 事案の概要:第一審判決の事実摘示において、被害者の氏名を「B」と表示していた。しかし、一件記録に徴すれば、本来の被害者は「C」であり、…