判旨
判決書に証拠の標目を誤記したとしても、それが単なる誤記に過ぎず、訴訟記録上適法に証拠調べを経たことが認められる場合には、適法な証拠調べを経ない証拠によって事実を認定したものとはいえない。
問題の所在(論点)
判決書に掲げられた証拠の標目が誤記されていた場合、刑事訴訟法上、適法な証拠調べを経ない証拠によって事実を認定した違法(証拠裁判主義違反)があるといえるか。
規範
判決における証拠の標目の記載が、訴訟記録上の訴訟手続の経過及び証拠書類の編綴の順序に照らして単なる誤記と認められる場合には、実質的に適法な証拠調べを経た証拠に基づいた事実認定として許容される。
重要事実
被告人が、第一審判決において適法な証拠調べを経ていない証拠によって事実が認定されたと主張した事案。原審は、訴訟記録における第一審の訴訟手続の経過や証拠書類が綴られた順序を検討した結果、第一審判決の記載は適法に証拠調べを経た証拠書類の名称を誤って記載した(標目の誤記)に過ぎないと認定した。
あてはめ
本件において、第一審判決が掲げた証拠の標目には誤りがあるものの、訴訟記録上の手続経過や証拠の編綴状況を精査すれば、対象となる証拠自体は適法に証拠調べの手続を完了していることが認められる。したがって、これは判決書作成上の技術的な「標目の誤記」に過ぎず、証拠調べを経ない証拠を実質的に採用して事実を認定したという実体的な違法を構成するものではないと評価される。
結論
適法な証拠調べを経た証拠の標目を誤記したに過ぎない場合は、証拠調べを経ない証拠による事実認定の違法があるとはいえず、上告理由に当たらない。
実務上の射程
判決書の形式的な不備(記載ミス)が、直ちに刑事訴訟法上の証拠裁判主義違反や手続違法を構成するか否かの限界を示す。実務上は、記録全体から適法な証拠調べの事実が客観的に確認できるかどうかが判断のポイントとなる。
事件番号: 昭和28(あ)579 / 裁判年月日: 昭和29年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書における裁判官の表示は、単に「裁判官」と記載すれば足りる。また、証拠物に関する調書上の些細な誤記は、実体的な同一性が認められる限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起した際、上告趣意において、①判決書に「裁判官」としか記載されていない点、および②調書に…