判旨
判決書における裁判官の表示は、単に「裁判官」と記載すれば足りる。また、証拠物に関する調書上の些細な誤記は、実体的な同一性が認められる限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
1. 判決書における裁判官の表記として「裁判官」と記載することは適法か。 2. 証拠物の名称に関する調書上の誤記は、上告理由となる重大な違法にあたるか。
規範
1. 刑事訴訟法上の判決書の記載において、裁判官の官職については「裁判官」と表記することで足りる。 2. 証拠物に関する調書において明らかな誤記がある場合であっても、他の証拠(領置調書等)との照合によりその同一性が客観的に認められるときは、手続上の瑕疵とはならない。
重要事実
被告人が上告を提起した際、上告趣意において、①判決書に「裁判官」としか記載されていない点、および②調書に記載された証拠物の名称(フツプ一ケ)が領置調書の記載(破片コツプ一)と整合しない点を、刑事訴訟法上の不備として主張した。
あてはめ
1. 判決書には「裁判官」と書けば法的に十分である。 2. 本件調書の「フツプ一ケ」という記載は、領置調書の「破片コツプ一」に対応するものであり、「コツプ一個」の単なる誤記にすぎない。したがって、証拠物の同一性に疑いはない。
結論
本件上告は棄却される。判決書の裁判官表記および調書の些細な誤記は、いずれも刑事訴訟法405条の上告理由には当たらず、同411条を適用すべき職権破棄事由にも該当しない。
実務上の射程
判決書の形式的要件や、証拠調書の些細な誤記に関する有効性を判断した極めて簡潔な判例である。実務上、証拠の同一性が争われる場面において、明らかな誤記が証拠能力や判決の妥当性に影響しないことを示す一助となるが、事案が特殊(単純な誤記)である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)2248 / 裁判年月日: 昭和28年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に証拠の標目を誤記したとしても、それが単なる誤記に過ぎず、訴訟記録上適法に証拠調べを経たことが認められる場合には、適法な証拠調べを経ない証拠によって事実を認定したものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人が、第一審判決において適法な証拠調べを経ていない証拠によって事実が認定されたと主張した…