国民健康保険法による保険者は、被保険者に保険給付を行なつたときは、同法第六四条第一項に基づき、その給付の価額の限度において被保険者の第三者に対して有する損害賠償請求権を当然取得する。
国民健康保険法第六四条の規定に基づく保険者の損害賠償請求権取得の時期
国民健康保険法64条1項
判旨
国民健康保険法64条(現行67条)に基づき、保険者が被保険者に保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権が当然に保険者へ移転する。
問題の所在(論点)
国民健康保険法64条(現行67条)による損害賠償請求権の移転は、保険給付の事実によって当然に生じるか、それとも特段の手続きを要するか。
規範
保険者が被保険者に対し、第三者の行為に起因する事故等について保険給付を行った場合、その給付の価額の限度において、被保険者が当該第三者に対して有する損害賠償請求権は、法律の規定に基づき当然に保険者へ移転する(法定代位)。
重要事実
上告会社の従業員Dが運転する自動車とEとの間で本件事故が発生した。保険者(被上告人)は、被害者Eに対して国民健康保険法に基づく保険給付を行った。保険者は、同法64条に基づき、Eが上告会社に対して有する自動車損害賠償保障法3条に基づく損害賠償請求権を代位取得したと主張して、上告会社に対して損害賠償を求めた。
あてはめ
国民健康保険法64条の規定を解釈するに、保険者が被保険者に対して保険給付を行ったという事実があるときは、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権が「当然に」保険者に移転すると解するのが相当である。本件において、保険者がEに対して給付を行った以上、上告会社に対する損害賠償請求権は給付額の限度で保険者に移転しており、上告会社が免責事由を証明できない限り、保険者の請求は認められる。
結論
保険給付により被保険者の第三者に対する損害賠償請求権は当然に保険者へ移転する。したがって、保険者の損害賠償請求を肯定した原判決は正当である。
実務上の射程
社会保険関係の代位規定全般に共通する解釈であり、実務上、保険給付による損害賠償請求権の承継を基礎付ける際の標準的な根拠となる。答案では、保険代位の法的性質が「当然の権利移転」であることを端的に示す際に活用する。
事件番号: 昭和62(オ)1532 / 裁判年月日: 平成元年1月19日 / 結論: 棄却
被保険者が第三者の不法行為によつて傷害を受けて就業不能になつたため、保険者が所得補償保険契約に基づき保険金を支払つた場合には、保険金相当額を休業損害の賠償額から控除すべきである。