銀行に対する定期預金の預金者甲が該定期預金証書の裏面の弁済受領欄に預金名義人の受領印を押捺して商品取引業者乙に交付し、甲乙間に締結された商品取引委託契約について、将来、清算の結果甲の乙に対する右契約上の債務の存在が確定したときに乙が甲に代つて右定期預金を払戻し、かつ、該払戻金を右債務の弁済に充当する権限を授与した場合には、特段の事情のないかぎり、甲は乙に対し、右債務を決済するため、乙が第三者に対し、甲に代つて預金の払戻を受け、該払戻金を第三者自身が取得する代理権をも授与したものと解するのが相当であり、右証書の受領欄に前記受領印が存在する等判示事情のもとにおいては、前記委託契約の清算前に乙が甲を代理して、丙に対し、右預金証書を交付し、丙において甲に代つて定期預金の払戻を受け、該金員をもつて、乙の丙に対する債務の弁済に充当しうる権限を授与したときは、当時、丙において、乙が右権限を有すると信ずるについて正当な理由があつたものというべきである。
民法第一一〇条の表見代理の成立が認められた事例
民訴法110条
判旨
定期預金債権への質権設定に伴い、債権者に対し預金の払戻受領権限及び弁済充当権限を授与することは可能であり、当該権限には復代理人の選任を含む代理権の授与が含まれると解される。
問題の所在(論点)
定期預金債権の質権設定に際し、設定者が債権者に対して預金の払戻・弁済充当の権限を授与できるか。また、その際に第三者(銀行)をして払戻を行わせる代理権の授与が含まれると解されるか、及びその権限を信じた第三者に表見代理(民法110条等)の適用が認められるか。
規範
定期預金債権に質権を設定した場合であっても、設定者は債権自体を失うものではない。したがって、質権設定と併せて、債権者に対し「預金者に代わって預金の払戻を受けた上、当該払戻金をもって債権者の預金者に対する債権の弁済に充当する権限」を授与することは可能である。このような授与行為は、債務不履行時に譲渡担保と同一の効果を生じさせる趣旨であるから、特段の事情がない限り、債権者が第三者(銀行等)をして預金の払戻を受けさせ、これを取得させることを許諾する代理権(復代理権を含む広義の権限)も授与されているものと解するのが相当である。
事件番号: 平成16(受)2134 / 裁判年月日: 平成17年7月11日 / 結論: その他
甲銀行に対し預金債権を有していた丁の死亡により,乙,丙及び戊が当該預金債権を相続したのに,甲銀行が当該預金債権の全額を乙及び丙に払い戻したこと,乙及び丙は,戊の法定相続分相当額の預金については,これを受領する権限がなかったにもかかわらず,払戻しを受けたものであり,この払戻しが債権の準占有者に対する弁済に当たるということ…
重要事実
上告人は、訴外D社に対する債務を担保するため、自己の定期預金債権に質権を設定した。その際、上告人は定期預金証書の裏面弁済受領欄に受領印を押捺してD社に交付した。D社は、被上告人(銀行)に対し、D社自身の債務の弁済がない場合に、被上告人が上告人に代わって預金を払い戻し弁済に充当し得る権限(復代理権に類する権限)を授与した。その後、被上告人がこの権限を行使して預金を払い戻したところ、上告人がD社に対する代理権授与の事実を否定し、被上告人の無権代理を主張して争った。
あてはめ
上告人が定期預金証書の裏面弁済受領欄に受領印を押捺して交付した事実は、D社に対し、将来の債権確定時に行使しうる払戻権限及び弁済充当権限を授与したことを意味する。この行為は実質的に譲渡担保と同様の機能を果たすものであり、D社が第三者である被上告人に対し、上告人に代わって払戻を受ける権限を再授与することも、上告人の授与した権限の範囲内に含まれる。被上告人は、受領印のある証書の提示を受けており、D社に正当な権限があると信じたことについて正当な理由があるといえる。
結論
上告人はD社に対し払戻及び弁済充当の代理権を授与したものと認められ、被上告人がその権限を信じて行った払戻は、代理権の授与または正当な理由のある表見代理の成立により、有効である。
実務上の射程
質権設定に伴う「白紙委任的」な預金証書の交付が、実質的に譲渡担保と同様の清算権限(代理権)の授与を含むことを認めた。答案上は、質権と代理権授与の併存可能性や、証書の交付という事実からいかなる範囲の代理権が推認されるか、また表見代理の「正当な理由」を基礎付ける重要な間接事実としての証書裏面への押捺の評価について論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和41(オ)657 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
任意競売手続において配当異議訴訟が提起され、その確定判決に従つて配当がされた場合であつても、右訴訟の当事者は、相手方が債権または抵当権を有しないにもかかわらず右配当を受け、そのために自己が配当を受けられなかつたことを理由として、右相手方に対して不当利得の返還を求めることを妨げない。
事件番号: 平成11(受)766 / 裁判年月日: 平成13年3月27日 / 結論: その他
1 加入電話契約者以外の者がいわゆるダイヤルQ2事業における有料情報サービスを利用した場合には,加入電話契約者は,情報料債務を自ら負担することを承諾しているなど特段の事情がない限り,情報提供者に対する情報料の支払義務を負わない。 2 加入電話契約者甲以外の者が利用したいわゆるダイヤルQ2事業における有料情報サービスに係…
事件番号: 平成22(受)16 / 裁判年月日: 平成23年12月15日 / 結論: 破棄自判
会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を,法定の手続によらず同会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定に基づき,同会社の債務の弁済に充当することができる。 (補足意見がある。)