商品仲買人が、商品取引所法第九七条に違反して、委託手数料および委託証拠金を徴することなく商品市場における売買取引をしても、右違反は、商品仲買人と委託者との間の契約の効力に影響を及ぼすものではない。
商品取引所法第九七条に違反して委託手数料および委託証拠金なしに売買取引がなされた場合における商品仲買人と委託者との間の契約の効力
商品取引所法97条
判旨
商品仲買人が委託手数料や証拠金を徴収せずに取引を行ったとしても、委託契約の効力は妨げられない。また、委託証拠金を別取引の債務担保に流用することは直ちに禁止されず、契約の趣旨に反しない限り有効である。
問題の所在(論点)
商品仲買人が委託手数料や委託証拠金を徴収せずに取引を行った場合、または証拠金を別取引の担保に流用した場合に、当該委託契約および取引の私法上の効力が否定されるか。
規範
商品取引所法上の委託手数料は委託業務への報酬であり、委託証拠金は債権担保を目的とするものである。これら規制は取引の公正を期すためのものであって、その徴収の有無や証拠金の流用が直ちに委託契約及び取引自体の私法上の効力を左右するものではない。特段の事情がない限り、契約の趣旨に反しない範囲での運用は有効と解される。
重要事実
商品仲買人である被上告人が、委託者(亡D)から委託手数料および委託証拠金をその都度徴収することなく商品市場での売買取引を行った。さらに、被上告人はある取引のために預かった証拠金を、同一委託者による他の取引から生じた債権の担保に流用・充当した。これに対し、委託者の相続人である上告人らが、当該取引の無効を主張して損金の支払義務を争った事案である。
あてはめ
まず、手数料・証拠金の未徴収については、それらが報酬や担保としての性質を持つにすぎないため、徴収を欠いても契約の効力に影響はない。次に、証拠金の流用については、商品取引所法92条(当時)が直接これを禁止しているとは解されない。本件では、原判決の諸事情に照らせば、証拠金の流用は委託契約の趣旨に反するものとは認められない。したがって、適法な充当計算がなされた結果として残る損金について、被上告人は上告人らに対しその支払を請求できるといえる。
結論
本件各取引は有効であり、商品仲買人は委託者の相続人に対し、取引により生じた損金の支払を請求することができる。
実務上の射程
行政法規上の義務違反(手数料・証拠金の徴収義務等)が、直ちに私法上の契約の効力を無効にするものではないという「取締規定」の性質を示す一例として活用できる。証拠金の流用についても、当事者間の合意や契約の趣旨に反しない限り、私法上は有効と解される余地を認めている。
事件番号: 昭和33(オ)85 / 裁判年月日: 昭和36年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商品取引所における受託契約準則に従う取引において、預け入れられた証拠金が規定の最低額に若干不足していたとしても、諸般の事情から当該準則による取引と認めることができる場合には、追加証拠金の未入を理由とする受託者の処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人に対し、綿糸および人絹の委託買付…