判旨
商品取引所における受託契約準則に従う取引において、預け入れられた証拠金が規定の最低額に若干不足していたとしても、諸般の事情から当該準則による取引と認めることができる場合には、追加証拠金の未入を理由とする受託者の処分は適法である。
問題の所在(論点)
取引において差し入れられた証拠金が、受託契約準則に定める最低額に不足している場合、当該取引を同準則に基づくものと認定し、追加証拠金請求および未入による処分を有効とすることができるか。
規範
取引が特定の受託契約準則に従うものであるか否かは、証拠金の差し入れの事実、および当該取引の態様や諸証拠を総合して判断すべきである。証拠金の額が準則所定の最低限度に厳密に一致しない場合であっても、直ちに当該準則の適用が否定されるものではなく、取引の実態に即してその適用関係を認定するのが相当である。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、綿糸および人絹の委託買付(取引額2,376,900円)を委託した。その際、証拠金として特定の株式1,000株(108,292円で処分)を差し入れたが、この額は受託契約準則が定める最低限度(約定値段の100分の5)に若干不足していた。その後、相場の下落に伴い、被上告人は上告人に対し追加証拠金の差し入れを請求したが、上告人がこれに応じなかったため、被上告人は当該商品を処分した。
あてはめ
本件において、上告人が差し入れた証拠金は準則所定の最低額に若干不足していた。しかし、証拠金の差し入れ自体は行われており、その他の証拠関係に照らせば、本件取引は同準則に従う意図でなされたものと認められる。また、相場下落に伴う追加証拠金の請求についても、具体的な金額の指示の有無にかかわらず、原審の証拠に基づき事実として認められる。したがって、準則の規定に従い、追加証拠金の未入を理由としてなされた被上告人の処分は正当なものといえる。
結論
本件取引は受託契約準則に従うものと認められるため、証拠金不足を理由とする処分の違法を主張する上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
契約準則や定款等が適用される取引において、形式的な要件(証拠金の額など)に完全な合致がなくても、当事者の態様や取引の性質からその適用を肯定できる場合があることを示している。実務上は、準則適用の合意の有無を認定する際の補助的な考慮要素として、実際の証拠金授受の事実を重視する。答案上は、契約の解釈や性質決定において、形式的数値の齟齬よりも取引の全体像を優先して判断する論理として援用できる。
事件番号: 昭和41(オ)784 / 裁判年月日: 昭和43年2月20日 / 結論: 棄却
商品の清算取引において、仲買人が委託者に対し、一定の期限を指定して委託証拠金の不足額を支払うよう催告し、あわせてその期限までに右証拠金を支払わないときは委託建玉を処分する旨通知したとしても、委託者が右期限内に証拠金の支払をしなかつた場合に、仲買人は右期限の経過した日に右建玉を処分すべき債務を負うものではないと解すべきで…