証書の成立の真正が確定されても、原告の主張する土地占有権原である賃貸借契約もしくは使用貸借契約に基づく権利の存否について直接証明があつたことにならないため、右土地に関する権利関係の争がこれによつて解決されたことにならず、しかも、原告および被告間の別件訴訟において被告が原告に対して右土地につき建物収去土地明渡請求権を有することが確定されている以上、原告が被告に対して右証書の真否の確認を求める訴は、その利益を欠き許されない。
民訴法第二二五条による証書真否確認の訴が許されないとされた事例
民訴法225条
判旨
証書の真否を求める訴えは、その証書が現在の権利関係を証明する直接の証拠であり、かつ、その真否の確定が紛争解決に有効かつ適切である場合に限り、確認の利益が認められる。
問題の所在(論点)
権利義務を規定する契約書そのものではなく、契約の申込の事実を示すにとどまる書面について、その真否の確認を求める訴えに確認の利益が認められるか。また、別件訴訟が確定済みである場合に、将来の再審や損害賠償の準備を理由とする確認の利益は認められるか。
規範
証書の真否を求める訴え(民訴法134条)が適法となるためには、確認の利益が認められなければならない。具体的には、当該証書が、当事者間の法律関係の存否を証明する直接の証拠となるべき書面(法律上の権利義務に関係ある事実に係る証書)であり、その真否を確定することが現在の法的紛争を解決するために必要かつ適切である場合に、確認の利益が認められる。単に過去の事実を証明するに過ぎない場合や、別個の手段で紛争解決が可能な場合には、確認の利益は否定される。
重要事実
上告人は、土地貸借契約書(貸主の代表者印を欠く書面)について、その真正でないことの確認を求めた。当該証書は、過去に別件訴訟において、貸借契約が不成立であったことを示す申込書面として提出されたものである。なお、別件訴訟の判決は既に確定しており、被上告人らが上告人に対し建物収去土地明渡請求権を有することが認められている。上告人は、再審や損害賠償請求の準備のために本件証書の真否確定が必要であると主張した。
あてはめ
本件証書は、真否が確定したとしても、単に特定の契約申込があったか否かを証明するにとどまる。これは土地占有権原の存否という現在の法律関係を直接証明するものではなく、証書の真否を確定しても権利関係の争いが根本的に解決されるわけではない。また、被上告人の明渡請求権は既に確定判決により認められており、現在の紛争は既に決着している。さらに、再審や損害賠償の訴えを提起するために、予め本件証書の真否を独立して確定しておく必要性も認められない。
結論
本件証書の真否の確認を求める訴えは、紛争解決にとって有効適切とはいえず、確認の利益を欠くため不適法である。
実務上の射程
証書の真否を求める訴えは「事実」を確認する例外的な訴訟形態であるため、確認の利益は厳格に解される。答案では「権利関係を直接証明する書面か」および「現在の紛争解決に直結するか」を検討し、単なる証拠資料に過ぎない場合や、別訴の証拠収集目的である場合には否定する流れで用いる。
事件番号: 昭和42(オ)704 / 裁判年月日: 昭和42年11月17日 / 結論: 棄却
書面に記載された内容が客観的真実に合致するか否かの確認を求める訴は許されない。