甲の乙に対する貸金の請求訴訟において、貸主甲が第一、二審ともに勝訴しているという事情のもとでも、右貸金債務に対し売渡担保とする趣旨で乙所有土地を甲に売り渡し乙は甲からその代金として右貸金該当額を受け取つた旨を記載した乙作成名義の書面により、甲が改めて権利の主張をする可能性が現に存しないとはいえない場合には、乙において右書面の真否確定を訴求する利益があるといわなければならない。
書面の真否確定の訴の利益があるとされた事例
民訴法225条
判旨
文書の真否確認の訴えにおいて、対象文書により証明される権利関係をめぐる別訴の判決確定後であっても、当該文書に基づく新たな権利主張の可能性があり、かつ現に争いがある場合には、即時確定の利益が認められる。
問題の所在(論点)
別訴(貸金請求訴訟)が継続中または判決確定間近である場合において、当該書面が将来の紛争の火種となる可能性があるとき、文書の真否確認の訴えに「確認の利益(即時確定の利益)」が認められるか。
規範
文書の真否確認の訴え(民訴法134条)が適法となるためには、その文書が「法律関係を証する書面」に該当することに加え、原告に「即時確定の利益」が認められなければならない。即時確定の利益は、被告から当該書面による権利主張がなされる具体的可能性が存し、原告の法的地位に不安が生じている場合に肯定される。
重要事実
上告人と被上告人の間には金銭貸借関係があり、被上告人は貸金の担保として本件土地の「土地売渡書」を上告人名義で作成した。被上告人は別途、貸金請求訴訟を提起し二審まで勝訴していたが、上告人は現在も本件土地を占有・耕作している。上告人は、将来被上告人がこの「土地売渡書」に基づき土地所有権等を主張することを防ぐため、同書面の真否確定を求めて提訴した。
事件番号: 昭和41(オ)1287 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 棄却
証書の成立の真正が確定されても、原告の主張する土地占有権原である賃貸借契約もしくは使用貸借契約に基づく権利の存否について直接証明があつたことにならないため、右土地に関する権利関係の争がこれによつて解決されたことにならず、しかも、原告および被告間の別件訴訟において被告が原告に対して右土地につき建物収去土地明渡請求権を有す…
あてはめ
本件「土地売渡書」は、記載内容自体から土地売買契約や所有権移転の事実を直接証明しうるため、「法律関係を証する書面」に該当する。また、被上告人が貸金訴訟で勝訴し強制執行を完了したとしても、上告人が現に土地を占有している以上、被上告人が改めて本件書面に基づき所有権等の権利を主張する可能性は否定できない。このような可能性が現在存する以上、上告人の法的地位には不安定さがあり、書面の真否を早期に確定させる必要性(即時確定の利益)があるといえる。
結論
本件書面による将来の権利主張の可能性が否定できない以上、上告人には本件訴訟を提起する即時確定の利益が認められる。
実務上の射程
確認の対象が過去の事実(作成行為)である文書の真否確認の訴えにおいて、確認の利益を肯定するための要件(現在および将来の紛争解決の有効性)を示したものである。別訴で主要な争点が解決しつつあっても、当該書面が別個の法律関係の証憑となり得る場合には、なお独立の確認利益が認められ得るという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和42(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和42年12月21日 / 結論: 棄却
書面の成立の真否が確認されても、これにより当該原告の権利ないし法律上の地位に存する危険または不安定が除去解消されない場合には、右書面の真否の確認を求める訴は、その利益を欠き許されない。
事件番号: 昭和39(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和40年11月16日 / 結論: 棄却
売買契約解除の場合に割賦支払済代金は売主において没収する特約があつたとの原告主張を被告が否認する旨主張しているからといつて、原告の原状回復請求に対し、支払済代金の返還をもつて同時履行の抗弁を提出したものとは解されない。