建物保護法による対抗力を有しない土賃賃借権がある場合に、賃貸人である土地所有者Yが当該土地を他に譲渡し、そのため賃借人Xがその賃借人たる地位を土地譲受人甲に対して主張しえなくなつたとしても、これにより債務不履行が成立することのあるのは格別、これをもつて、ただちにYが違法にXの権利を侵害したものということはできない。
建物保護法による対抗力を有しない土地賃借権が当該土地の譲渡により消滅に帰した場合と賃貸人の賃借人に対する不法行為の成否
民法415条,民法709条
判旨
賃貸人が賃貸中の土地を第三者に売却し、賃借人が対抗要件を備えていないために借地権を失った場合、賃貸人は債務不履行責任を負い得るが、当然に不法行為責任を負うものではない。
問題の所在(論点)
賃貸人が、対抗要件を備えていない賃借人の存在する土地を第三者に譲渡し、賃借人が地位を主張できなくなった場合、賃貸人は不法行為に基づく損害賠償責任を負うか。
規範
賃貸人が目的物を第三者に譲渡し、賃借人が対抗要件(建物保護法1条等)を欠くために権利を失った場合、賃貸人は賃借人に対して使用収益させる債務の履行不能による債務不履行責任を負う。しかし、権利の喪失が対抗要件の不備に起因する場合、特段の事情がない限り、譲渡行為自体が直ちに不法行為法上の違法な権利侵害を構成するものではない。
重要事実
賃借人(被上告人)は、建物所有目的で土地を賃借したが、建物を建築・登記していなかった。賃貸人(上告人)は、仲介人に賃貸中である旨を告げたものの、地位承継の合意をすることなく土地を第三者Dに売却した。その後、Dからさらに転売を受けたFに対し、賃借人は対抗要件(当時の建物保護法1条)がないため賃借権を対抗できず、権利を喪失した。原審は、この譲渡行為が不法行為を構成すると判断した。
あてはめ
本件において、被上告人が土地の譲受人に対して賃借権を主張できなくなったのは、土地上に登記のある建物を所有しておらず、対抗要件を備えていなかったためである。賃貸人が土地を売却する際、仲介人に賃貸の事実を告げるなどしており、地位承継の契約を締結しなかったとしても、その譲渡行為が直ちに違法に賃借人の権利を侵害したとはいえない。したがって、債務不履行上の賠償責任が生じる可能性はあるものの、不法行為責任を認めるには理由が不十分である。
結論
賃貸人が土地を譲渡したことにより賃借人が権利を失ったとしても、直ちに不法行為責任を負担するものではない。原判決の不法行為成立の判断には法令の解釈に誤りがある。
実務上の射程
二重譲渡と同様、債務不履行責任と不法行為責任を区別する。対抗要件を具備しなかった賃借人の落ち度も考慮されるため、原則として債務不履行の問題として処理すべきであり、不法行為を主張する場合には加害の態様等における特段の違法性の論証が必要となる。
事件番号: 昭和43(オ)191 / 裁判年月日: 昭和44年7月8日 / 結論: その他
家屋の所有者がその敷地を占有する権原のない場合に、右所有者を代表者とする会社がその家屋を借りて占有しているときは、右会社は、敷地の所有者に対し、敷地の不法占有による損害賠償責任を負う。