賃貸借の目的となつている土地の所有者が、その所有権とともに賃貸人たる地位を他に譲渡する場合には、賃貸人の義務の移転を伴うからといつて、特段の事情のないかぎり、賃借人の承諾を必要としない。
賃貸土地の所有者がその所有権とともにする賃貸人たる地位の譲渡と賃借人の承諾の要否
民法466条,民法601条
判旨
不動産の譲渡に伴う賃貸人たる地位の移転は、賃貸人の義務の承継を伴うが、賃借人の承諾を要せず、新旧所有者間の合意によってなすことができる。
問題の所在(論点)
不動産の所有権移転に伴い賃貸人の地位を譲渡する場合において、賃借人の承諾が必要か、また、その承諾がない場合に旧賃貸人の債務不履行責任が問えるか。
規範
土地の賃貸借契約において、賃貸人の地位を譲渡するには、特段の事情のない限り、賃借人の承諾を必要とせず、新旧所有者間の契約をもってこれを行うことができる。賃貸人の義務は、誰が賃貸人であるかによって履行方法が特に異なるものではなく、また新所有者に義務を承継させることが賃借人にとっても有利であるといえるからである。
重要事実
土地所有者である被上告人が、上告人(賃借人)に対し土地を賃貸していたところ、被上告人はDに対し、本件土地の所有権とともに賃貸人たる地位を譲渡する旨を合意した。その後、賃貸人としての地位の移転をめぐり、被上告人に債務不履行があるか否かが争われた。
あてはめ
本件では被上告人とDとの間で、所有権譲渡とともに賃貸人たる地位を移転させる旨の合意がなされている。賃貸人の義務は没個性的なものであり、新所有者Dが承継しても賃借人の利益を損なわない。したがって、上告人の承諾がなくても賃貸借関係はDに有効に移行したといえる。その結果、被上告人は賃貸人としての義務を免れ、使用収益させる義務の不履行は存在しないこととなる。
結論
賃貸人の地位の移転に賃借人の承諾は不要である。被上告人は賃貸人としての地位を離脱しており、債務不履行責任を負わない。
実務上の射程
対抗要件を備えた賃貸借だけでなく、不動産の譲渡に伴う地位の移転一般に適用される法理である。ただし、賃貸人たる地位の移転を主張するには、原則として所有権移転登記を要すること(最判昭49・3・19参照)に注意を要する。
事件番号: 昭和41(オ)124 / 裁判年月日: 昭和43年7月18日 / 結論: 破棄差戻
建物保護法による対抗力を有しない土賃賃借権がある場合に、賃貸人である土地所有者Yが当該土地を他に譲渡し、そのため賃借人Xがその賃借人たる地位を土地譲受人甲に対して主張しえなくなつたとしても、これにより債務不履行が成立することのあるのは格別、これをもつて、ただちにYが違法にXの権利を侵害したものということはできない。
事件番号: 昭和41(オ)798 / 裁判年月日: 昭和41年12月16日 / 結論: 棄却
一 賃貸人の承諾をえた賃借権の譲渡による旧賃借人が賃貸借関係から離脱した旨の判断については、当事者の主張を要しない。けだし、これは、適法な賃借権の譲渡の事実から生ずる法律上の効果にすぎないからである。 二 所有者兼賃貸人から賃借人に対する損害賠償の請求は、賃貸借の終了による原状回復義務の債務不履行にもとづくものであると…
事件番号: 昭和33(オ)889 / 裁判年月日: 昭和35年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借の目的物である建物の所有権が順次移転した場合、借家法上の対抗要件を具備しているときは、賃貸人としての地位は新所有者に当然に承継される。 第1 事案の概要:建物所有者Dと賃借人(被上告人)の間で賃貸借契約が締結されていた。その後、本件建物の所有権がDからEへ、さらにEから上告人へと順次移転した…