判旨
賃貸借の目的物である建物の所有権が順次移転した場合、借家法上の対抗要件を具備しているときは、賃貸人としての地位は新所有者に当然に承継される。
問題の所在(論点)
建物の所有権が転々譲渡された場合において、旧賃貸人と新所有者との間に特段の合意がなくとも、賃貸人としての地位(使用収益させる義務等)が新所有者に承継されるか。また、その承継の根拠が問題となる。
規範
建物の賃貸借において、借地借家法(旧借家法)上の賃借権の対抗要件を備えている場合、その建物の所有権が譲渡されたときは、特段の合意がなくとも賃貸人としての地位は新所有者に当然に移転・承継される。これにより、新所有者は賃借人に対し使用収益をさせる義務を負う。
重要事実
建物所有者Dと賃借人(被上告人)の間で賃貸借契約が締結されていた。その後、本件建物の所有権がDからEへ、さらにEから上告人へと順次移転した。上告人は、被上告人に対し、賃貸人としての義務を承継していない旨を主張して建物の明渡し等を求めた(または義務の存在を争った)。
あてはめ
本件では、DからE、Eから上告人へと建物の所有権が順次移転している。被上告人は本件家屋について借家法上の対抗要件を備えた賃借権を有していると解される。したがって、所有権の移転に伴い、D・被上告人間で成立していた賃貸借関係は、法律上当然に新所有者である上告人に承継されたものと評価できる。この結果、上告人は被上告人に対して賃貸人としての義務を負うことになる。
結論
本件建物の賃貸借は上告人に当然に承継されるため、上告人は被上告人に対し建物の使用収益をさせる義務を負う。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)890 / 裁判年月日: 昭和35年6月23日 / 結論: 棄却
賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰した場合であつても、転貸借は、当事者間にこれを消滅させる合意の成立しない限り、消滅しないものと解すべきである。
不動産賃貸借における賃貸人地位の当然承継を認めた基礎的な判例である。答案上は、対抗要件を具備した賃借権が存在する場合、所有権移転に伴い賃貸人地位が法律上当然に移転することを述べる際の根拠として活用する。また、現行の民法605条の2第1項の規定と整合する法理として理解される。
事件番号: 昭和33(オ)235 / 裁判年月日: 昭和36年6月23日 / 結論: 棄却
民法第六〇二条所定の期間を超える建物賃貸借は、抵当権の登記後に成立したものであるときは、これを登記しても、右期間の範囲内においてもこれをもつて抵当権者兼競落人に対抗し得ない。
事件番号: 昭和33(オ)1004 / 裁判年月日: 昭和36年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借家法1条の2(現借地借家法28条)にいう正当事由は、賃貸人が建物を自ら使用することを必要とする場合であっても、当然に認められるものではなく、諸般の事情を考慮して総合的に判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)は、被上告人(賃借人)に対し、建物の賃貸借契約について更新拒絶または解…