正当な権原のない建物占有者から賃借して占有している者は、所有者に対し不法占有に基づく損害賠償義務を免れない。(昭和三三年(オ)第五一八号昭和三五年九月二〇日第三小法延判決参照)
正当な権原のない建物占有者から賃借した者の損害賠償義務
民法709条
判旨
建物占有者が、所有者との関係において正当な権原を有していない場合には、所有者と第三者との間に賃貸借契約が存在するか否かにかかわらず、当該占有者は所有者に対して不法占有に基づく損害賠償義務を負う。
問題の所在(論点)
建物の不法占有者が損害賠償義務を負うにあたり、所有者と第三者との間に別途賃貸借契約が存在することが、損害賠償義務の成立を妨げる事由となるか。
規範
建物占有者が所有者との関係において正当な占有権原を有しない場合、当該占有は不法占有となり、所有者に対して民法709条に基づく損害賠償義務を負う。この義務の成否は、所有者が第三者との間で別途賃貸借契約を締結しているか否かによって左右されない。
重要事実
上告人A1は、被上告人が所有する本件建物について占有していたが、被上告人との関係において正当な権原を有していなかった。一方で、被上告人と訴外D株式会社との間には、本件建物に関する賃貸借契約の有無が争点となっていた。上告人側は、被上告人と第三者の間に賃貸借関係が存在するならば、不法占有に基づく損害賠償義務は生じない旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、上告人A1の本件建物に対する占有は、被上告人との関係で正当な権原に基づくものではないと認定されている。仮に被上告人と訴外D社との間に賃貸借契約が存在したとしても、それは被上告人と第三者の内部的な法律関係に過ぎない。上告人が被上告人との関係で適法に占有する権利を有しない以上、被上告人の所有権行使を妨げている事実に変わりはなく、不法占有に基づく損害賠償義務を免れることはできないと解される。
結論
上告人A1は、被上告人に対し、不法占有に基づく損害賠償義務を負う。被上告人と第三者との間の賃貸借関係の有無は、この結論を左右しない。
実務上の射程
所有者が第三者に賃貸中の不動産であっても、権原のない占有者(転借人として認められない不法占有者等)に対して直接、賃料相当損害金の賠償を請求できることを示す。不法占有者の責任を追及する際、所有者の損害発生の有無について、第三者への賃貸可能性や現存する契約に縛られず請求可能である点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和36(オ)92 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸借終了に伴う目的物返還義務を履行できない場合、火災が不可抗力等の債務者の責めに帰すべからざる事由によるものであることを賃借人側で立証しない限り、善管注意義務違反に基づく損害賠償責任を免れない。 第1 事案の概要:Dが所有し上告人が賃借していた家屋の2階部分が、出火により焼失した。Dは上…