一、土地の賃借人が地上に所有する建物に抵当権を設定しその登記を経たのちに賃貸人の承諾を得て賃借人から土地の賃借権のみを譲り受けた者は、抵当権の実行により競落人が建物の所有権とともに土地の賃借権を取得したときに競落人との関係において賃借権を失い、競落人が右賃借権の取得につき賃貸人の承諾を得たときに賃貸人との関係においても賃借人の地位を失う。 二、土地の賃貸人が抵当権の実行による地上建物の競落人の土地賃借権取得を承諾したことにより、右抵当権の設定登記後に賃貸人の承諾を得て土地の賃借権のみを譲り受けた者が賃借人としての地位を失つても、これをもつて賃貸人の責に帰すべき事由によるものとすることはできない。
一、土地の賃借人が地上に所有する建物の抵当権を設定しその登記を経たのち第三者が賃貸人の承諾を得て土地賃借権のみを譲り受けた場合と抵当権実行後の右土地賃借権の帰すう 二、土地の賃貸人が抵当権の実行による地上建物の競落人の土地賃借権取得を承諾したことにより右抵当権の設定登記後に賃貸人の承諾を得て土地の賃借権のみを譲り受けた者が賃借人としての地位を失つた場合と賃貸人の責に帰すべき事由の有無
民法87条2項,民法370条,民法415条,民法601条,民法612条1項
判旨
建物抵当権の効力は従たる権利である敷地賃借権にも及び、建物に抵当権設定登記がなされれば賃借権への効力も対抗力を生じる。そのため、登記後に賃借権を譲り受けた者は、競落人が賃借権取得につき賃貸人の承諾を得た時点で賃貸借関係から離脱し、賃貸人は譲受人に対し債務不履行責任を負わない。
問題の所在(論点)
抵当権設定登記後に賃借権を譲り受けた者が、その後の競売に伴う競落人への賃借権移転により地位を失った場合、賃貸人は譲受人に対して債務不履行(履行不能)の責任を負うか。
規範
1. 建物に設定された抵当権の効力は、原則としてその建物の所有を目的とする土地の賃借権にも及ぶ。2. 建物について抵当権設定登記がなされたときは、抵当権の効力が賃借権に及ぶことについても対抗力を生じる。3. 右登記後に賃借権を譲り受けた者は、対抗力ある抵当権の負担が付着した賃借権を取得するにすぎず、競落人が賃貸人の承諾を得た場合には、譲受人は賃貸借関係から当然に離脱する。
重要事実
土地賃借人Eは、地上建物に抵当権を設定し登記を済ませた。その後、被上告人(原告)はEから賃借権を譲り受け、賃貸人の承諾を得て新たに賃貸借契約を締結したが、その際建物に抵当権があることを知っていた。その後、抵当権が実行され訴外会社が建物を競落。賃貸人が訴外会社による賃借権取得を承諾したため、被上告人は土地の使用収益が不能になったとして、賃貸人の地位を承継した上告人らに対し、二重賃貸による履行不能(債務不履行)に基づく損害賠償を請求した。
あてはめ
本件では、被上告人が賃借権を取得する前に建物抵当権の登記がなされており、抵当権の効力は賃借権に対しても対抗力を有していた。被上告人はこの負担付きの権利を取得したにすぎない。競落人が賃貸人の承諾を得た時点で、被上告人は賃貸借関係から離脱するため、賃貸人と譲受人・競落人との間に「二重賃貸」の関係は生じない。賃貸人が競落人の賃借権取得を承諾することは、賃借権に譲渡性を付与する行為にすぎず、譲受人との関係でこれを拒むべき義務はない。したがって、被上告人の地位喪失は権利自体の負担が具体化した結果であり、賃貸人の帰責事由は認められない。
結論
賃貸人は譲受人に対して土地を使用収益させる義務を負わず、その履行不能を論ずる余地はないため、債務不履行責任を負わない。被上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
抵当権の効力が従たる権利(賃借権)に及ぶこと、および建物登記が賃借権への効力の対抗要件となることを示した重要判例である。債務不履行の成否を検討する際、登記の前後関係から「権利の負担」を認定し、二重賃貸の成否を否定するロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)82 / 裁判年月日: 昭和38年3月1日 / 結論: 棄却
甲が、乙に対する債権確保のため、乙所有の不動産につき順位一番の抵当権設定登記をうけ、その後停止条件付代物弁済契約による所有権移転請求権保全の仮登記をうけ、さらにその後丙が乙に対する債権担保のため右不動産につき順位二番の抵当権設定登記をうけた場合に、甲が丙に対し順位一番の抵当権の順位を譲渡してその旨の附記登記を経由したと…