甲が、乙に対する債権確保のため、乙所有の不動産につき順位一番の抵当権設定登記をうけ、その後停止条件付代物弁済契約による所有権移転請求権保全の仮登記をうけ、さらにその後丙が乙に対する債権担保のため右不動産につき順位二番の抵当権設定登記をうけた場合に、甲が丙に対し順位一番の抵当権の順位を譲渡してその旨の附記登記を経由したときは、その後条件の成就により甲が乙から右代物弁済をうけても、丙は、甲および乙に対し順位一番の抵当権をもつて対抗することができる。
抵当権の順位の譲渡の効力。
民法375条,民法376条
判旨
抵当権の順位を譲渡し、その附記登記を了した者が、その後自己の抵当権よりも後順位の仮登記に基づき代物弁済を受けても、譲受人の抵当権は消滅せず侵害もされない。
問題の所在(論点)
抵当権の順位の譲渡が行われた後に、順位を譲渡した側(譲渡人)が目的物につき代物弁済を受けた場合、順位を譲り受けた側(譲受人)の抵当権は消滅するか、またはその実行が妨げられるか。
規範
抵当権の順位の譲渡(民法376条1項)は、譲渡人と譲受人の間で相対的に順位を転換させる効果を有し、譲受人は譲渡人が有していた抵当権の範囲および順位において優先弁済権を行使し得る立場となる。したがって、順位を譲り渡して後順位となった者が、その後債務者から代物弁済等により債権の満足を得たとしても、先に優先的順位を取得した譲受人の抵当権に影響を及ぼすものではない。
重要事実
1番抵当権者(仮登記担保併用)である被上告人が、2番抵当権者Eに対し、抵当権の順位を譲渡して附記登記を経由した。その後、Eは上告人にその債権および抵当権を譲渡した。一方で、被上告人は1番抵当権設定時になされた後順位(2番抵当権より後)の代物弁済予約に基づく仮登記により、債務者から本件不動産の代物弁済を受けた。上告人は、被上告人の代物弁済によって自己が譲り受けた旧1番(現1番)抵当権が消滅または実行不能になったとして、被上告人に対し不法行為等の損害賠償を求めた。
あてはめ
被上告人からEに対し順位の譲渡がなされたことで、Eは第1順位の抵当権者としての地位を、被上告人は第2順位の地位をそれぞれ取得した。上告人はこのEの地位を承継している。被上告人がその後に代物弁済を受けたとしても、それは第2順位に退いた自己の債権の満足を図るものにすぎず、既に第1順位を確保している上告人の抵当権には何ら影響を与えない。したがって、上告人の抵当権が消滅したり、その実行が不能になったりしたという事実は認められない。
結論
上告人の抵当権は消滅しておらず、その実行も妨げられないため、損害が発生したとはいえず、本件請求は理由がない。
実務上の射程
抵当権の処分(順位の譲渡・放棄)の相対的効力を確認する。後順位者が順位譲渡により優先権を得た場合、前順位者(譲渡人)のその後の債権回収行為(代物弁済等)によって譲受人の優先権が害されることはないという法的安定性を示す判決であり、抵当権の順位変更や処分を巡る実務の基礎となる。
事件番号: 昭和31(オ)252 / 裁判年月日: 昭和35年6月24日 / 結論: 棄却
不特定物の売買においては、特段の事情のないかぎり、目的物が特定した時に買主に所有権が移転するものと解すべきである。