特許法による審決の再審事由たる判断遺脱の瑕疵についての知、不知は、右審決謄本の送達を受けた代理人について決すべく、審判当事者本人は、これと異なる時期において右再審事由を知つたものと主張することはできない。
代理人に審決謄本の送達があつた場合において右審決について再審事由たる判断遺脱を知つたものとされる時期
特許法171条,特許法173条,民訴法420条
判旨
審決の再審事由である「判断の遺脱」は、代理人が審決謄本の送達を受けた時に知り得たものと推認され、再審の訴えの出訴期間(除斥期間)は代理人を基準に進行する。
問題の所在(論点)
再審事由の存在を「知った」か否かの判断基準、および代理人が選任されている場合における知・不知の判定基準(民事訴訟法上の再審規定の準用ないし特許法上の再審請求期間の起算点)。
規範
1. 審決における判断の遺脱という再審事由は、特段の事情のない限り、審決謄本の送達を受けた当時これを知り得たと推認すべきである。 2. 審判請求が代理人によってなされた場合、事由の知・不知は代理人を基準として決する。 3. したがって、代理人が審決謄本の送達を受けたときは、当事者本人は当時における不知を主張して期間の進行を妨げることはできない。
重要事実
上告人は、特許庁の抗告審判の審決に対し、判断の遺脱があるとして再審を請求した。しかし、当該審決の謄本は既に代理人に送達されており、送達から再審請求までの期間が法定の不変期間を経過していた。上告人は、再審請求は特殊な救済手続であるから、代理人ではなく当事者本人が再審事由を了知した時から期間が進行すべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件では審判手続に代理人が選任されており、当該代理人は審決謄本の送達を受ける権限を有していた。審決に判断の遺脱という瑕疵が存在する場合、代理人が審決謄本を受領した時点でその瑕疵を覚知し得たといえる。代理人が覚知し得なかった特段の事情も認められない以上、代理人の受領時をもって「知った」ものとみなされ、本人による不知の主張は認められない。
結論
再審の訴えの提起期間は、代理人が審決謄本の送達を受けた時から進行する。したがって、期間経過後になされた本件再審請求を不適法とした原判決は正当である。
実務上の射程
行政不服申立てや審判手続において、代理人が選任されている場合の主観的期間(知った日から○日)の起算点を検討する際の規範として活用できる。特に、形式的な送達によって知ったと推認される「判断の遺脱」等の瑕疵については、代理人基準が厳格に適用されることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和41(行ツ)12 / 裁判年月日: 昭和42年10月17日 / 結論: 棄却
確定審決に対して再審の請求を認める特許法第一七一条の規定は、旧特許法(大正一〇年法律第九六号)による特許出願拒絶査定を不服とする抗告審判の審決についても適用される。